真の歴史へ・その四

「見鬼君が役に立たなくてね。 地下鉄の構内や下水道なんかにいるらしいんだが、私とピート君では追跡が出来ないんだ」

「霊を操ってる死霊使いを探すのは簡単じゃないわ。 霊波の質の見極めが必要だもの」

唐巣は苦笑いを浮かべながら追跡に失敗した時の話をするが、動物霊が溢れてる中で死霊使いを探すのは人間では難しい

タマモは霊波の質を的確に見極める必要があると語るが、それは空気中から酸素だけを見つけだせと言ってるようなものである

常に動き回る霊達を操る僅かな念波を見つけるのは、霊視や調査専門のGSでも難しいだろう


(あれ……、この事件なんか記憶にあるような……)

一方無言だった横島だが、この事件の報告書や話に記憶の奥にある過去を思い出し始めていた

割とどうでもいい事件だったので記憶の奥に追いやっていたのだが、妖怪か動物の死霊使いと言うと嫌な思い出が蘇ってくる


(出来れば忘れてたかったな。 しかし何一つ教わるつもりがなかった俺も、教えようともしなかった美神さんも大概だな)

過去の醜態に恥ずかしさが込み上げて来る横島だったが、よく考えてみると何も教わってないのに突然相手の霊波を防ぐなど不可能だったと思う

霊能の勉強や修行をまるでしなかった自分と教える気ゼロだった令子で、よくあの厳しい戦いの連続を生き残れたものだとシミジミ実感する


「こういった依頼は本来ならば大勢での人海戦術かGS犬の力を借りるのがセオリーなのだが、GS犬は日本には数が少なくてね。 とても僕では助っ人料を支払えないんだよ」

無言の横島にチラリと視線を向けた唐巣はそのまま説明を続けるが、GS犬は数が少ない割に需要が高く頼む料金も高い為に頼むのが大変らしい

実は唐巣がその気になればGS犬の力を借りるアテはあるのだが、美神や六道など正直あまり借りを作りたくない相手が多いのだ


「GS犬も人海戦術も必要ないわ。 人が増えると面倒だもの」

一通り説明を聞いたタマモはこのまま三人で除霊をすることを求めて、唐巣もそのつもりだったらしく他の助っ人は頼んでないらしい

この辺りは横島はともかく、タマモの術をあまり他のGSに見られたくない事情もある

人間ではすでに失われてる術を多数使えるタマモは、面倒事になるので他のGSと関わりたくないのだった


「では、さっそく行こうか」

そのまま横島とタマモは唐巣に案内されるままに現場へ向かう事になるのだが……



「なんか嫌な予感がするな……」

現場近くに来た横島達だったが、GSらしき霊能者数人とすれ違っていた


「現場付近は同じような動物霊が多発していてね。 付近の人が同じ依頼を別々に出してるんだ。 本当は一本化して協力した方がいいんだが、なかなかね」

横島の表情を見た唐巣は事情を説明していくが、どうやらあちこちの人が別々にGSを雇ってるらしい

都心の繁華街での事件なだけに霊障の損害が馬鹿にならない金額になる為にあちこちの店で依頼をだしてるようだ


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