真の歴史へ・その四

鬼道がクラスの関係を改善しようしてる頃、横島事務所には冥菜が訪れていた

美味しいと評判のケーキを持参した冥菜は横島と横島達が進めている無害な妖怪の保護の話などをしていたが、ふとしたきっかけで学校の話になる


「愛子ちゃんはいい子ね~ 彼女の学校の妖怪の話は大人気なのよ~ 教師陣の中にはゆくゆくは霊能科の教師になって欲しいって人も居るわ~」

相変わらずニコニコとした笑顔の冥菜だったが、話の内容は割と真剣な事だった

愛子が学校でどうしてるかなどを報告する形で語るが、冥菜はゆくゆくは教師になって欲しいとの考えを横島に伝える

これは本格的な決定ではないが、実際に教師の中からは愛子を教師にするべきだとの意見は上がっているし冥菜も割と乗り気だったのだ

妖怪の側から見た学校や人間や霊能者の話は、生徒のみならず教師達ですらハッとする事がある話もあった

何より生徒達に妖怪は敵ではないと教えるには、愛子ほどの適任者が居ないのが現状である

妖怪を害ある存在だと考えたり霊能力至上主義な生徒が少なくない現状で、冥菜はいかにして生徒達に現実を教えるかで苦労していたのだ


「俺としては本人の意思次第ですけどね。 ただ妖怪をきちんと知るには愛子が一番いいのは確かでしょうね」

冥菜の言葉に横島は明確な答えを避けつつ、本人さえよければ教師も構わないと考えていた

妖怪の全てが愛子のような存在ではないが、愛子の存在が人と妖怪の僅かな懸け橋になる可能性は決して低くはない

まあ愛子を守る最低限の後ろ楯は必要だが、それくらいならば横島達で十分な訳だし


「本格的な話はまだまだ先なんだけどね~」

少なくとも三年間は学生として生活させた方が、愛子も霊能科の生徒を理解してくれると冥菜は考えている

この話はあくまで世間話ついでであり、横島にそれとなく話して反応を探る程度であった


「あと~、おキヌちゃんと小鳩ちゃんの事なんだけど~……」

愛子の話が途切れた瞬間、冥菜は珍しく言いにくそうな表情でおキヌと小鳩の名前を口にする

実は冥菜の本題はこちらであった

現状としてはまだそれほど問題と言えるほどではなかったが、早めに手を打ち謝罪に来たのだ


「俺達は学校での事に口出ししませんよ。 それに二人は多少の苦労なんかに負けませんし……」

冥菜が謝罪しようとした瞬間、横島はそれを悟り必要ないと言わんばかりの言葉を告げる


(やっぱり知ってたのね~)

横島が自分の言いたい事をすでに理解してると悟った冥菜は、思わず背筋に冷たいモノが流れる気がした

それはすなわち小竜姫が二人の現状をきちんと見守ってる事に他ならない

冥菜は早々に謝罪に来た自分の考えが正しい事にホッとしていた

仮に横島が謝罪を必要ないと言っても、謝罪に来た事実は無駄ではなく誠意は伝わっただろうと思うのだ

仮に小竜姫に介入の意思など全くなくとも、礼儀だけは尽くさないと何があるかなど冥菜には分からないのだから


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