「困った事になったわね～」

横島達が人狼の件に全力を上げてる頃、六道女学院ではおキヌ・小鳩と弓かおりの対立が理事長である冥菜の耳に入って頭を悩ませている

双方共に大人の対応をして陰湿な嫌がらせなどしてない事からまだよかったのだが、学校側としては無視出来ないほど溝が深まってしまった現状はやはり問題だった


「毎年居るんですよね。　霊能力に全てを賭けてる子が……。　この弓かおりという子も霊能力至上主義でして……」

老年の男性教員はかおりの人となりを冥菜に語るが、六道女学院霊能科では霊能力至上主義な人間は決して珍しくない

幼い頃から霊能力の修行に人生を賭けて来た者の中には霊能力しか知らない者もおり、六道女学院をＧＳになる為のステップの一つとしか考えてない者もいる

特別世間知らずとか人間性に問題がある訳ではないが、一般の学生に溶け込めない生徒は毎年少数ながら存在したのだ


「鬼道君は真面目で熱心なんだけどね～」

「彼はまだ若いですから、生徒への細かな配慮が欠けるのは仕方ないかと……」

問題を早期に解決しなかった鬼道に冥菜は苦笑いを浮かべてしまうが、それでも鬼道の評価は悪くはなかった

人生経験の足りなさから細かな配慮に欠ける鬼道だったが、霊能力の技術は素晴らしいし何より熱心な性格から生徒や保護者の受けがいいのだ

鬼道を監督しているこの老年の教員も鬼道を評価しており、後は経験が必要だと感じている


「問題は当人達よりも周りにあるかもしれません。　霊能力への価値観や意識が違い過ぎるんです。　クラスメートの大半が弓かおり君を疎んでまして……」

本来ならば個別に呼び出してしっかり話を聞き対処するのだが、クラスメートの中にはかおりへの反発が予想以上に強かったのだ

自分が表立ってかおりと対立する頃は誰もが避けていたが、おキヌと小鳩という対立する者が現れた事で日和見を決めていた生徒が流れてしまったのである


「困ったわね～」

ため息をはく冥菜だったが、この問題の根本として誰かが間違ってると安易に言えない事だろう

かおりは誰よりも霊能力と真剣に向き合っているが、おキヌ達やを他の生徒はそこまで霊能力に全てを賭けてない

それはどちらかが間違ってる訳ではないし、学校側としては一方的に指導する訳にもいかないのだから


「それで、小竜姫様の方は……？」

「この件に関わらず向こうからは何も言って来ないわ～　限度を超えない限りは動かないんでしょうね～」

学校で少ないながら問題が起きてる現状に老年の教員は小竜姫の反応を気にしているが、冥菜は何もないと言い安易に口出ししない事を理解している

しかし教育者としても理事長としても、冥菜はこの件を放置は出来なかった

いろいろ影で噂のある冥菜だったが、生徒達の未来を想う気持ちは確かであり本物なのである