真の歴史へ・その四

山中で武装した不審者が狙撃された事件は、辻斬り事件との関連も疑われる為に当然として捜査の指揮は警察側が取ることになった

オカルトGメンは引き続き事件の捜査に協力していたが、あの後はさしたる証拠もないまま終わる

結果的に辻斬り事件には妖怪か妖刀の類が関与した可能性を示しただけであった



「先生、撃たれた被害者の素性が判明しました」

捜査から二日後、オカルトGメンの美智恵の元に事件の捜査の内容が届く


「ICPOの犯罪者データに情報がありました。 国際テロ組織の末端だと疑われてる人物です」

「国際テロ組織が何故あんな場所に?」

「そこは県警も掴んでないようです」

辻斬り事件は現時点で分かってる事は少なく、警察は人海戦術で捜査をしてるがあまり成果は出てない

対して美智恵達が保護した不審者の方はその素性が明らかになると、警察には激震が走っている

日本国内で国際テロ組織の末端が撃たれた事件は、一県警の管轄を越えて問題になっていたのだ


「テロリストが日本の山の中で何をやってたのかしらね?」

「そこは県警も重要視して捜査を進めてます。 ただ国際テロ組織との繋がりは疑惑の段階で確証はないのが現状です。 現在分かってる事は、世界各地の紛争地帯に出入りして傭兵まがいの事をしてるくらいなようです」

西条の報告にも美智恵は相変わらず淡々とした表情で聞いてる

西条はそのまま報告を終えて部屋を後にするが、美智恵の表情の奥に隠された動揺に気付かぬままだった


「まさかこの件に南部グループの件が関わってるの?」

美智恵は最も考えたくない事件の繋がりに、背筋に冷たいモノが走るような気がする

横島が関わりそうで武装したテロリストが関わる事件は二つしかないのだ

一つは南部グループの心霊兵器開発の事件と、もう一つはザンス過激派による国王襲撃事件である


「何故もっと早く気付かなかったの? 横島君の逆鱗に触れる行為という意味では南部グループが一番なのに……」

美智恵は半ば確信を持って南部グループと辻斬り事件の関わりに気付いていた

かつて未来で人狼族のシロが横島を先生と慕っていた事は美智恵も知っているし、横島が妖怪や人外をどう考えてるかはこの時代に来てからの行動で明らかなのだ


「おそらく人狼族へのテコ入れが行われたわね。 でも南部グループは……」

横島達が人狼族の被害を減らしフェンリルを人知れず始末するだろうと美智恵は予測するが、問題は南部グループである

未来においての南部グループの件は非常に難しい問題だったのだ

南部グループの心霊兵器開発には様々な背景が存在している

ICPOや先進各国がテロ指定していた組織や一部の小国が、南部グループの開発に資金援助などで一枚噛んでいたのだ

世界の国々や組織にとって誰でも使える心霊兵器は、喉から手が出るほど欲しいのが現状である


しかし一番の問題は人造魔族を作り出した事だった

実はアシュタロス戦の後始末のどさくさに紛れて、南部グループの件は神族による人界への介入という異例の結果をもたらしている

研究者と南部グループ経営陣は神隠しに合いアシュタロス戦のどさくさで死亡した事にされていた


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