真の歴史へ・その四

「どういう事だ? 民間のGSか?」

銃刀法のある日本国内で合法的に自動小銃を所持してるのは、軍隊以外ではGSくらいなのだ

誰かが除霊をしてる可能性が高いのかと西条は考えるが……


「目標を変更して不審人物に接触して事情を聞きます」

予定外の不審人物に西条は対応を悩むが、美智恵は即座にそちらの追跡を決断する

どうせ人狼の方は横島達が解決して自分達が関わっても無駄だと判断したのだ

下手に首を突っ込んで香港の時のように、また上手く利用されたら堪らないし

それよりは明らかに不審者である人間を追跡した方が利があると判断したのである


(八房事件で武装した人間なんか居なかったわ。 イレギュラーの原因は突き止めなくては……)

表向きは殺人事件の捜査だったが、美智恵は未来と変わった八房事件のイレギュラーに関わる人物の確保に躍起になっていた

今更かもしれないが事件の内容はだいぶ変わっており、犯人の出現場所から犯行パターンまでまるで違ってるのだ

今後の対策を考えると僅かなイレギュラーの情報でも欲しかったのである



一方横島達の決着は一瞬だった

煙幕で全てを隠した中では横島の文珠もタマモの仙術も惜しみなく使用して、魔族化が進む人狼の動きを力付くで強制的に封じてしまう


「まずいわ。 このまま中途半端なままだと魂が崩壊してしまうわ!」

バイザー越しに人狼の様子を即席で分析していたルシオラは、強制魔族化の予想外の悪影響で人狼の魂が崩壊の危機に瀕していると声を上げる


「大丈夫です。 私の竜気で魔族化を止めます」

若干焦りが見えるルシオラの声に小竜姫は普段は隠してる竜気を解放して、人狼に注ぎ込んでいく

人狼本来の魂を竜気で保護強化して、魔族化の術を掻き消すつもりである

横島達の誰もが視界がゼロの中で、霊視だけを頼りに人狼を救うべく力を尽くしていった


「強制魔族化の術式が消滅したわ。 でもやっぱり変ね」

作業は全てが順調だった

小竜姫の竜気で一瞬にして魔族化を阻止して人狼に戻したのだが、肝心の人狼は相変わらず朦朧とした表情のままなのだ

魔族化への変化途中で動けぬ人狼を強制的に押さえ付け魔族化を阻止したまでは完璧だったのだが、ルシオラは人狼の意識レベルが不安定過ぎる現状に何か違和感を感じる


「盗聴器の類とかはないみたいね。 このまま事務所に運びましょう。 精密検査をしないとよく分からないけど、まだ何か問題がありそうだわ」

そのまま魔族化を阻止した人狼の身体検査をしたルシオラは、拘束したままで事務所に運ぶことにした

数日監視した時から気付いていたが、何かしらの問題があることは明らかなのだ

魔族化はすぐに分かって阻止出来たが、根本的なここ数日の人狼の様子がおかしかった原因は相変わらず不明なのである


「それじゃ、あの二人も連れてさっさと消えるか。 南部グループの連中に顔を見られるのは避けたいしな」

煙幕の煙りが晴れるまえに横島達は三人の人狼を連れてその場を離れていく

今南部グループに自分達の存在を知られる訳にはいかないとの考えからだったが、煙幕の外で美智恵達が南部グループの武装兵士を追っていたなど知らぬままだった


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