真の歴史へ・その四

(なんか邪悪な波動が……)

オカルトGメンご自慢のウルトラ見鬼くんの指し示す方向へ美智恵達と共に向かうピートだったが、近付けば近付くほど嫌な予感と邪悪な霊波を感じて冷や汗を流し始めていた

何か得体の知れない 力を感じて、ピートの霊感がそちらへ行くなと告げてるようである


(相手は八房を持った人狼……。 このメンバーだと正面から戦うのは危険ね)

一方美智恵は歴史を知るがゆえに、いかにして撤退するかを考えていた

元々妖怪や魔族と力比べなどするつもりは全くない美智恵としては、敵の正体を確認して後の対策に繋げる事が重要なのだ

人狼の里を飛び出して来るシロは恐らく横島達に保護されるだろうが、人狼と何かしらの交渉を持ちアルテミス召喚に持ち込む事など美智恵には簡単であった


そんな時、突然大気に響くような獣の叫び声がオカルトGメン一行に響いて来る


「何だ!?」

その瞬間に西条は銃を抜き令子は神通棍を構えるなどそれぞれに戦闘体制に入るが、攻撃は離れた場所から聞こえる



一方叫び声の元では横島達が魔族化していく人狼のテリトリーからギリギリの場所で、捕獲のタイミングを探していた

苦しみますます身体が巨大化していくその様子は、かつて未来で見たフェンリル化していく様によく似ている

未来では一瞬で巨大化したが、目の前の人狼は苦しみながら徐々に魔族化しているのだ


「お二人は危険ですのでここで待ってて下さい。 あの人狼は私達が必ず保護します」

全員がいざ行動を開始しようとした時、小竜姫は人狼の二人に手出しは無用だと告げる


「しかし、あれは我らの仲間! 黙って見てることなど!!」

「申し訳ありませんが足手まといです。 必ず助けますから動かないで下さい」

小竜姫の言葉には激しい気性の犬飼ポチのみならず犬塚ジロウも抗議をするが、そんな二人に小竜姫は足手まといだとはっきり告げてしまう


「大丈夫です。 今なら私の竜気で即座に魔族化を阻止出来ますから」

不満そうな二人に小竜姫は自信に満ちた笑みを見せると、横島達四人は気配を消して人狼のテリトリーに入って行った


「……仕方ない。 我らはここで待とう。 竜神様に逆らう訳にはいかん」

悔しそうな二人だったが、横島達の気配の消し方や移動するスピードは人狼族有数の二人でも対抗出来ないほどレベルの違うモノである

明らかに自分達がお荷物だと感じ二人は悔しさに唇を噛み締めていた



『魔族化が終わるまで、あと三分もないわ』

『無傷で捕らえるには今しか無いわね』

『今ならばまともに戦えないでしょう。 三人で取り押さえてくれれば私の竜気で強制的に魔族化を止めます』

四人は気配を消して魔族化する人狼に近寄りつつも、念話を使い対策を立てていく

ルシオラは常に魔族化の進行具合を確認しながらタイムリミットを計算しており、タマモと小竜姫で具体的な行動を瞬時に決める

いかに横島達とはいえ、現状で人狼が魔族化してしまったら無傷で捕らえるのは簡単ではない

まして潜在能力は並の神魔を上回る人狼族なのだから、下手をすればフェンリルの劣化版のような魔狼になる可能性が高い訳だし……


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