真の歴史へ・その四

「まさかGSではなくオカルトGメンが来るとはな」

美智恵達が現地警察署に到着して捜査協力を開始した頃、南部グループ心霊兵器研究所では茂流田と須狩がオカルトGメンの介入に対応策を相談していた

八房と人狼のデータは欲しいが、万が一心霊兵器の開発がオカルトGメンに露見するとプロジェクトの進退にも関わるのだ


「本社の指示は?」

「撤退だそうだ。 部隊を引き上げさせて、研究所の場所を移動する事も検討してるらしい」

心霊兵器開発プロジェクトは何もこの二人が全ての責任者ではない

研究チームの責任者は彼ら二人だが、プロジェクトの総責任者は紛れも無く南部グループ経営陣だった

会社の内外から非合法に集めた資金は莫大であり、すでに引き返せないところまで進んでいる

今更オカルトGメンの介入などあったら会社は終わりだった


「オカルトGメンと言えば、メドーサを退治した連中でしょ? いいデータが取れそうなのに……」

上層部から人狼に関わる作戦の撤退を命令された須狩だったが、絶好の機会を前に撤退するのはあまりにももったいないと考えている

過激派として人界において様々な活動をして来たメドーサを退治した実力のデータが、是非とも欲しかったのだ


「仕方ないさ。 心霊兵器の開発計画が露見すればクビが飛ぶ連中がたくさん居るからな。 だが……、ただ撤退するのは芸がないと思わんか?」

撤退を渋る須狩に茂流田は仕方ないとは言うが、ただで撤退するつもりはないようだ

意味ありげな笑みを浮かべると部下に指示を出す



一方地元警察の指揮下でさっそく捜査に乗り出したオカルトGメンだが、彼らは犯人が人外の可能性を考慮して現場付近からの霊視を開始していた


「やはり妖怪か」

「結構強い妖力痕ね。 仮に妖刀だとしても、これだけ強いと一般人だと意識を乗っ取られるかも」

オカルトGメンの最先端機器を持参して現場検証をした結果、見事に妖力の反応が現れている

種族の特定までは不可能だったが、犯人が妖怪か妖刀を持つ人間なのは確かだった

西条と令子は検証をしつつ今後の対策などを相談するが、美智恵はそんな二人と距離を開けたままで一人で山を見つめている


「美智恵君、何か気付いたのかね?」

「いえ犯人が妖怪ならば山狩りが必要ですが、あれほど残虐な妖怪を相手に山に入るのはあまりにも危険かと……」

捜査を西条と令子に任せたまま山を見つめる美智恵に、唐巣は何か様子がおかしいと気付いて尋ねるが、その答えは当たり障りのないものだった


「気持ちのいいお天気ね~」

一方助っ人のGS達だが冥子は近くに咲く花を見つめ楽しそうにしており、カオスはオカルトGメンの経費で買った弁当を食べている

ピートはそんなバラバラなメンバーに内心ため息をはきつつ、小竜姫に言われた人狼が来ないか人知れず警戒していた


(このメンバーを僕が守るんですか? 小竜姫様も無茶な事を……)

小竜姫にすぐに撤退しろと言われたためその通りにするつもりのピートだったが、問題はこのメンバーがピートの言葉を素直に聞くかだった


(最悪唐巣先生と六道さんだけでも逃がさないと……)

彼らが自分の言葉を無視したならば、最悪の場合は唐巣と冥子を逃がすべきだとピートは考える

カオスは簡単に死にそうにないし、美神親子と西条がピートの話を聞くとは思えなかったのだ


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