真の歴史へ・その三

さて横島達より遅れる事二日、警察からの協力要請の元でオカルトGメンは事件の捜査協力に乗り出していた

被害者の検死結果に凶器が霊刀だと判明したためである


「これはまた……」

東京から関西のとある県警にやって来た西条は、あまりに残虐な検死報告書に思わず顔を歪めた

全身ズタズタに切り裂かれて殺された被害者の傷は、西条が見た事ないほど残虐だった


「致命傷が12カ所って、いったいどうやればそんなになるのよ」

「科捜研の検証では複数での犯行だと思われます。 最低でも3~4人の霊刀か妖刀を持った者でなければ不可能だとの結論です」

西条と共に報告書に目を通す令子だが、こちらは致命傷になった傷の数と場所に驚きを隠せない

まるで集団でリンチのように斬られたような傷の数と場所に、険しい表情でその結果を見つめている


「霊刀はそれほど安い物ではないのだがな…… 複数の人間が霊刀を持って集まって何をしたいんだ?」

「これ本当に人間なの? 妖怪や魔族なんじゃないの?」

警察の報告書から西条は素直に人間で犯人像を推測していくが、令子は犯人が本当に人間なのか疑問を感じていた

この辺りの直感はやはり令子の方が優れているようである


「確かに人間には不可能だろうが、妖怪や魔族なら可能か。 しかしこんな事件の前例は見た事がないな」

令子の指摘に西条も一理あると記憶の中にある過去の事件を辿るが、該当するような妖怪や魔族に心当たりがない

本来はこの場で警察にアドバイスをして終わりなのだが、前例がなく妖怪や魔族かもしれない事件なだけに警察との交渉の末、あくまでも捜査は警察がするが協力という形でオカルトGメンも捜査に加わる事になる



(史実と違うけど人狼の辻斬りが始まったわね。 万が一彼らが動かない時の為に私も無視する訳にはいかないか。 それにこの機会にやっておきたい事もあるしね)

東京に戻った西条はこの事件の捜査に加わる事を美智恵に報告するが、美智恵からの答えはGS協会への協力要請も加えるようにとの命令だった

未知で危険な魔族や妖怪の可能性を攻略してGS協会との協力の上でGSをも動員して捜査するように告げたのだが、美智恵の真意は別にある



ここでGS協会とオカルトGメンの関係を説明するが、表向きは協力体制を強調しているが実情は険悪そのものだった

発足当初は実はそれほど険悪ではなかったのだが、オカルトGメンが警察や公官庁などの依頼を一手に引き受けるようになると関係は悪化している

オカルトGメンには多額の税金が投入されており、国は当然税金を投入した分だけ働かせようとしたのだ

国がオカルトGメンに投入した税金は以前ならば民間GSへの依頼料として支出していた予算なので、国の対応としては当然なのだが……

問題はオカルトGメンに実務能力がほとんどないことだった

ろくな人員も居ないオカルトGメンは国や公官庁からの依頼を、ほとんどそのままGS協会へ協力要請という形で流している

しかも国から依頼料が別に出るはずもないそれらの依頼はオカルトGメンから僅かな謝礼金が出ていたが、その依頼料金は以前と比べると激減しており民間GSの収益は著しく悪化しているのだ


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