真の歴史へ・その三

人狼二人が新たに滞在する事になった横島事務所だが、元が古い旧渋鯖男爵邸なので建物の規模にくらべれば部屋数があまりない

元々横島達四人の住居兼事務所に使うには問題なかったのだが、美衣とケイ親子やヒャクメや斉天大聖老師まで住んでおり部屋は客室を含めて全て埋まっている

人狼二人に協力要請したはいいが、二人が滞在する部屋がなかった


「リフォームしよっか。 そろそろ限界だったし」

二人の滞在する場所を急遽考える事になった横島達だったが、人数の増加に伴いリビングもキッチンも含めて全体的に手狭だったのだ


「リフォームってどうする気だ?」

「空間を歪めて建物全体の広さを変えるのと、別空間を繋げて部屋数を増やすののどっちがいい?」

人狼二人の滞在場所を考えていた横島達だったが、タマモが突如リフォームすると言い出した

首を傾げる横島達三人にタマモは、仙術によって部屋を広げるか増やすと説明する


「どっちがいいって聞かれてもな。 任せるよ」

建物全体を広げるのと部屋を増やす事の二者択一なのだが、横島を始めルシオラや小竜姫もどちらがいいか判断出来ずに任せてしまう


「リビングやキッチンはもう少し広い方がいいし、客室は四つは欲しいわよね」

横島達に任せられてしまったタマモは一人でぶつぶつと呟きながら考え、結局建物全体を今の1・5倍にしつつルシオラの異界空間を利用して客室を増やすという荒業をやってしまった


「うにゃー!! 部屋が……部屋が……」

何の予告もなく部屋を広げた事に慌てたのは、事務所内に居た者達である

特に幼いケイは怖かったようで、部屋から慌てて飛び出して来て小竜姫に抱き着いてしまう


「ゴメンね。 家が狭かったから部屋を広げただけよ」

「そういう事は先に教えて欲しいのねー 魔族の襲撃かと思って焦ったわ」

事務所に居た者が一斉に部屋を飛び出して廊下に集まった事に、タマモは少しだけ済まなそうに謝った

実は説明が面倒だったから先に広げたとは、流石に言えなかったようである

ちなみに部屋に残り平然としていたのはゲーム中の老師だけだった

何が起きたのか理解してたのか、ゲームが手を離せなかっただけなのかは不明だが……


「これは……」

「人狼の里にまで噂になるはずだ」

一方応接室で待たされていた犬塚ジロウと犬飼ポチは、他の者と同じく突然部屋が広くなった事に驚き廊下に飛び出して来ていた

そんな二人の驚きはそこに居たメンバーだろう

先程神族の小竜姫だけでも驚いていたのに、魔族や妖怪が普通に生活してるとは予想など出来るはずがなかったのである


「驚かせてすいません。 屋敷を改築しただけですのでもう大丈夫ですよ。 お二人のお部屋の用意はもう少し時間がかかります」

驚き目を見開く人狼達だったが、横島が簡単に説明すると半ば呆然としながらも一応納得したようだった


「後はベッドや家具の買い出しね」

驚いていた一同が部屋に戻ると、ニコニコと笑顔のタマモは楽しげに横島と雪之丞を連れて買い出しに行く


「イタズラっ子なのは相変わらずなのですね」

「タマモちゃんはやっぱり妖狐なのよね」

楽しげに買い出しに向かうタマモを見送った小竜姫とルシオラは、久しぶりに見たタマモ本来のイタズラっ子な部分を見て苦笑いを浮かべていた


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