真の歴史へ・その三

一方南部グループの心霊兵器研究所では、早速暴走の検証が行われていた


「原因は分かったか?」

「やはり八房の制御に失敗したものと思われます。 どうやら人狼の妖力が制御には必要かと思われます」

こちらではすでに原因究明がかなり進んでおり、暴走のおおよその原因を掴んでいる

逃げ出したのは心霊兵器の試験体として洗脳された人狼だったのだが、八房を実験的に使わせてる最中に突然暴れだし結界や分厚い壁を破り逃走してしまったのである


「うむ、引き続き調査してくれ。 あれの量産化さえ出来れば、心霊兵器の強さが思いのままになるのだ」

報告を受ける茂流田にとって試験体の逃走はどうでもよかった

八房はすでにコピー可能なほどのデータを確保しており、理論上は八房のコピーを作る事も可能なのである

試験体にする人狼はまた捕まえてくればいいだけなのだから、現状では八房と試験体の稼動データの方が必要だった


「そろそろGSのデータも欲しかったしな。 ちょうどよかった。 誰が関わるかは知らんが、存分にデータをとらせてもらうとしよう」

ニヤリと不気味な笑みを浮かべた茂流田は、八房のデータ見つめて興奮を抑え切れないように高笑いする

そこは狂気に包まれた空気なのだが、それに彼らは気付かぬままだった



ところ変わってルシオラの研究室では、横島が人狼の里に向かった後も監視と情報収集に全力を上げていた


「妙な連中を発見したのねー」

ルシオラの監視用兵鬼大魔球Jrとタマモの簡易式神が謎の人狼と周辺を監視調査する中で、新たな発見をしたのはヒャクメである

表立った戦闘は出来ないヒャクメだったが、その調査能力は地味に横島達の力になっていた



「あれは霊波迷彩服。 いったいどこの人間なの?」

ヒャクメが発見したのは5人組の人間で、全員霊波迷彩服を着て銃器で武装している

何かの測定機のような物やビデオカメラなどを持ち、明らかに一般人ではない


「オカルトGメンの特殊部隊でしょうか?」

「美神美智恵が本部を動かした形跡は今のところないわ」

銃器で武装した兵士が付近で謎の人狼を監視している現状に、ルシオラ達は戸惑いを隠せなかった

小竜姫は同じ未来を知る美智恵が手を打ったのかと考えたが、ルシオラが監視している範囲で美智恵が動いた形跡はないのだ


「嫌な予感が当たったわね。 人間が相手なのは楽じゃないわ」

人間の組織が何かしらに関わってる可能性が高くなった現状に、嫌な予感を感じていたタマモの表情は険しい

フェンリルの復活も問題ではあるが、横島達にとっては人間の組織が相手の方が遥かに大変だった

これが横島達を潰す罠の可能性もまだ否定出来ないし、何より人間が関わってると決まった以上は発見した5人が更なる囮や罠の可能性もある

人間社会という大きなモノが関わった以上、横島達が迂闊に動いて人狼を捕らえるのはリスクが高すぎるのだった


「とりあえず、あの連中の正体の洗い出しが先ね。 日本国内で銃器を扱ってる以上は、正体の洗い出しはさほど難しくないわ」

結局ルシオラ達は謎の人狼を監視しつつ、武装兵士の洗い出しを急ぐことになった


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