真の歴史へ・その三

タマモの直感により監視に留めた横島達だったが、すぐさま横島は人狼の里へと向かっていた

八房らしき刀と人狼が現れた件を人狼族に告げなければならない為である


八房捜索の依頼を受けた際に、横島は人狼族の隠れ里の大まかな場所だけは聞いていたのだった

流石に通行手形は渡さなかったが、緊急時の連絡先にとジロウが教えて行ったのである


「地脈からのエネルギー供給による半永久的な封鎖結界だな。 こりゃまた随分と凄いもんだ」

人狼の里近辺に到着した横島は、その結界の実態に驚きの声を上げていた

山と周辺の森がすっぽりと結界に包まれているだけでも驚きなのだが、結界自体が目立たないように秘匿させている

人間の霊能者ではよほど注意して探さないと結界がある事すら気付かないほどなのだから、横島の驚きようも当然だろう



「貴様は……、八房が見つかったのか!!」

結界に近寄る人間を監視していた人狼の一人に犬飼がいた

犬飼は横島の姿を見ると驚いた様子で姿を現す


「それらしき刀は見つかりました。 ただ少々厄介な状況になってます。 出来れば人狼族の協力が欲しいのですが」

犬飼の警戒するような視線を気にする事なく横島は現在の状況を説明するが、その難しい現状に犬飼は事態を長老に報告するために一端里に戻っていく

人狼達は流石に部外者の横島をすんなりと結界内に入れるつもりはないらしく、横島は結界の外で犬飼の返事を待ちつつ過去を思い出していた


(あいつこんな場所に住んでたんだな~)

過去の僅かな期間とはいえ自分を師と慕ってくれたシロの事を、横島は一日たりとも忘れた事などない

それは師と弟子と言うよりは亡くした父親の代わりを求めてたのかもしれないと思う横島だが、今となっては真相など分かるはずがない


横島とシロが最後に会ったのは予防接種の時であり、アシュタロス戦後は会ってない訳だし……

横島は人狼の里の場所など知らないし、妙神山に篭ったためにシロがあの後どう生きたのか全く知らないのだ

まあ神魔戦争が始まる前はどうか知らないが、神魔戦争が始まった後は平和を望む人狼が里を出たとは思えなかった

人狼族や月神族などの神魔と距離を開ける平和的な種族のほとんどは、最後まで中立を貫き世界と運命を共にしている

世界が滅びゆくのをシロがどう見ていたのか、横島はずっと気になっていた



そんな時だった

人狼の里の方から小さな気配を感じて視線を送ると、小さな狼が木の影に隠れて横島を見つめている


(シロ!?)

それは紛れもなく成長する前の狼形態のシロそのものだった

大人達が八房と暴走する人狼をどうするか話し合ってる隙に、興味本意で人間を見に来たのだろう

この時代のシロとの初対面は、意外な形でのものだった


「我々が同行する事になるが構わないか?」

横島とシロの対面は僅かな時間だった

犬飼とシロの父親であるジロウが里からやって来るとシロは結界内に連れ戻されていく

人狼族の話し合いの結果、腕に自身がある犬飼とジロウが横島に同行して事件の確認と対処をする事になったらしい

横島はそのまま二人を連れて事務所に転移して行った


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