真の歴史へ・その三

それから少し時が過ぎて、人狼の八房捜索依頼から一週間が過ぎていた

八房は相変わらず見つからないしフェンリル事件らしき辻斬りも起きてないため、横島達は新しい情報がないまま一週間が過ぎている

まあ横島達の仕事は八房捜索だけではないし、南部グループの件や通常の除霊活動も行っているため全く無意味な一週間だった訳ではないが……



「いや~、苦労したアルヨ。 これがここ最近妖刀やオカルトアイテムを集めてる人の名簿ネ。 ワタシは怪しいか怪しくないかまでは調べてないけど、きっと役に立つと思うアル」

この日横島事務所には厄珍が訪れて、横島の探していた妖刀を持っていそうな名簿を持ち込んで来ていた

オカルトアイテムの盗品などを平気で買ってる人間の名簿であり、非合法なオークションなどに参加してる者も多い

厄珍は八房は見つけられなかったが、それに繋がりそうな人をリストアップして持ち込んでいたのである


「流石だな。 一週間でこんだけ調べてくるとは……」

約百人の怪しげな連中の名簿を見て、横島は感心半分呆れ半分と言った感じだった


「残念ながら探してる物は見つからなかったアル。 でも盗品を集めてるとすれば、どこかに手がかりがあるはずネ。 非合法な手口使う連中は他でも非合法な事してるアル」

八房が見つからない現状で無理に探すのではなく、関係してそうな連中をリストアップしてくる厄珍の仕事の速さには横島も脱帽である

スピードがいかに大切かを理解しており、非合法な連中なら必ず他でも非合法な事をすると言う読みもまた素晴らしいものだった

このリストを元に捜索していけば、今の手がかりがない現状よりはかなり確率が上がるのは確かなのだ


「金の流れは消しても消しきれないものアル。 そして盗品には必ず金が絡むネ。 最近は何かと物騒な世の中アルからワタシが出来るのはここまでネ」

厄珍が持って来たリストは非合法に盗品の売買をする連中がほとんどであり、最近売り買いが活発な連中を選んで来たらしい


(流石は厄珍、この手の裏側に関しては美神さんとタメ張れるな)

何かと危険な事をしている厄珍だったが、彼の凄さはやり過ぎない事と引き際の早さだろう

非合法な事にも手を染めてるが他人に怨まれるような事は基本的にはしないし、危険だと判断したら撤退も早い厄珍の手口は絶妙である

長い年月オカルト絡みのアイテムを扱ってる実力は伊達ではなく、その手の裏側の使い方は未来の令子より数段上だろう


「本当に助かったわ。 また貴重な情報があればよろしく頼みます」

横島が分厚い封筒を渡すと、厄珍はそれを確認する訳でもなく懐に入れてニコニコと帰っていく

見た感じや重さからしても満足がいく報酬だったらしい


「あの人は大丈夫なのですか?」

「信用は出来ないけど、小竜姫の怒りを買うような馬鹿じゃないよ。 あいつその返のさじ加減が上手い奴なんだわ」

厄珍が帰った後、別の部屋で様子を見ていた小竜姫がやって来るが厄珍に不信感を抱いてるようである

そんな小竜姫に横島は僅かに苦笑いを浮かべて、少なくとも自分達に不利な事はしないだろうと告げていた

厄珍ならば小竜姫の正体を知っているだろう事は横島も理解しており、自分達に被害が及ぶ事を厄珍がするはずがないと理解している

正直横島もあまり関わりたい人間ではないのだが、贅沢を言ってられるほど余裕がないのは確かなのだ

この後横島達は厄珍の名簿も絡めて八房捜索を続けていく事になる


89/100ページ
スキ