真の歴史へ・その三

「予想外の展開ね」

一方二人が帰った横島事務所でも、予想外の事態に話し合いが持たれていた

まさか人狼が助けを求めて来るなど、タマモですら予想外だったのだ


「困ったわね、八房を探すのは大変よ」

仕事として引き受けた以上は八房を探すのを再開しなければならないが、やはり簡単ではない

ルシオラは忙しい最中に仕事が増えた事にため息をはいてしまう


「しかたないな…… ちょっと情報漏れが怖いけど、その道のプロに頼むか」

現状で八房が見つかる可能性はあまり高くない

しかし転売などするならば見つけることが可能かもしれないのだ

あまり気が進まない様子の横島が尋ねたのは厄珍堂だった



「妖刀あるか?」

八房の特徴を説明し盗まれた妖刀を探していると告げると、厄珍は少し考え込む様子で横島を見つめる


「人狼族の秘宝らしいが、厄介な特性があるらしい。 もし裏で売り出されたら、いくらでもいいから買ってくれ。 報酬は十分に払う」

「わかったアル。 似たような八房か似たような噂を聞いたらすぐに知らせるアルヨ」

横島としては何かと胡散臭い噂の多い厄珍を警戒しているが、厄珍は良心的な仲介料だけで依頼を引き受けていた


(竜神小竜姫に逆らう馬鹿は居ないアルネ。 それに交流が出来るだけで悪くない話アル)

横島としては抜け目のない厄珍を警戒しているが、厄珍は小竜姫の正体を知っており横島達相手に何かするつもりはないらしい

それどころか関わるきっかけがなかった横島達とコネが出来る可能性があると考えると、タダでもいいと思ったほどである

厄珍としてはあまり深く関わるつもりもないが、一定の距離を保った関係は構築したかったのだ


「そういえば、最近南部グループにきな臭い噂があるネ。 街で隠れ住んでいた妖怪が何人か、南部グループに雇われたと言って姿消したアル。 ボウズ達が保護してる連中も気をつけた方がいいアル」

話が終わり帰ろうとした横島に厄珍は突然小声できな臭い噂があると告げた

横島がそっと数万円をカウンターに置くと厄珍は知っている情報をペラペラと話していく

どうやら厄珍は人間の街に住む妖怪やはぐれ魔族とも商売をしてるらしい

厄珍の常連の数人が、南部グループで割のいい仕事を見つけたと言い残して帰って来なくなったらしいのだ


「仲介してる連中が誰だか分かるか?」

「詳しくは分からないアルが、霊能者だったらしいネ」

厄珍の情報を聞いた横島は、新しい情報が入ったら買うと告げて帰っていく

厄珍としては保護している横島へのサービスのつもりで教えたのだろうが、予想外の情報に横島は急ぎ事務所に帰って行った


「南部グループが妖怪を雇ってる? そんな情報はないわよ」

「どうやら私達の知らないルートからも妖怪達を確保してるようですね」

事務所に帰った横島はルシオラ達に厄珍から聞いた情報を話すが、ルシオラは南部グループで妖怪が働いてる痕跡はないと言う

厄珍の情報の裏を取る必要はあるが、もし真実ならばおそらく南部グループに騙されたのだろうと結論づける

その卑怯なやり口に小竜姫は、うっすら殺気を纏い怒りをあらわにしていた


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