真の歴史へ・その三
それから二日後、横島事務所の応接室は微妙な緊張感に包まれていた
「では、人狼族の盗まれた秘宝を探して欲しいと?」
来客の対応をする横島は、目の前の二人に内心で戸惑いを感じていた
その理由は、相手がシロの父親である犬塚ジロウとフェンリル化するはずだった犬飼ポチの二人なのだから……
それは突然の事だった
犬塚ジロウと犬飼ポチの二人が、里から盗まれた秘宝の刀を探して欲しいと依頼をしに尋ねて来ていたのだ
「以前、こちらが我々の仲間の人狼を助けて頂いた事を聞いたのです。 こちらでは密かに妖怪の支援もしてるとか…… あれは世に出してはならぬ秘宝なのです。 どうかお力をお貸し下され」
二人の表情は対称的だった
ジロウは低姿勢で話を進めているが、ポチは横島を睨み胡散臭げに警戒している
「助けたと言うか、道に迷われていたので案内しただけですよ。 確かに当方は妖怪の支援もしておりますが、盗品の捜索ははっきり言うと自信がありません」
ジロウが語った仲間の人狼を助けたと言うのは、以前横島達が偶然都内で道に迷っていた人狼を助けた事であった
お金を落とし道に迷って困っていたところで、お金を貸して案内しただけである
横島はまさかそんな些細な出来事が今回の事件に影響するとは、思いもしなかった
「相手はただの盗っ人ではありません。 我々人狼族が追跡出来ないとなると、何かしらの目的があるのやもしれません。 どうかお願いいたします」
見つける自信がないと言う横島にジロウは食い下がり助けを求める
これはジロウの半ば独断の行動だが、彼はこの件が何か重大な問題になるかもしれないと危機感を感じていたのだ
「結果は保障出来ませんがよろしいですか? 刀の捜索はしますが、見つからない可能性が高いですよ」
食い下がるジロウに横島は八房捜索の依頼を引き受ける事にしていた
一昨日から八房の捜索は半ば打ち切られていたので迷ったのだが、ジロウの真剣な頼みに根負けした形である
ジロウはしばらくしたらまた尋ねてくるので、よろしく頼むと告げて帰っていく
「犬飼、気付いたか? あの事務所には人間以外の匂いや気配が多かった事に」
「ああ、詳しくはわからなかったが妖怪の匂いが複数あったな。 噂は本当だったのか……」
事務所を後にした二人は、事務所で感じた複数の妖怪の気配に驚きと困惑を感じていた
横島事務所が妖怪の支援をしてるとの噂は他の人狼の里で聞いた話だったのだが、二人は横島事務所内に生活してるだろう妖怪の匂いや気配を感じていたのである
人間と妖怪が一緒に暮らすなど信じられない二人は、横島事務所の事実に複雑な気分だった
「それにあの男ただ者でないな」
加えてジロウは横島から見た目以上の隠された力を感じており、その評価はかなり高い
妖怪である自分達への態度や表情の変化など注意深く観察した結果、ジロウは横島に八房の捜索を頼んでいたのだ
完全に信頼した訳ではないが、信義を通して頼めば決して悪いようにはしない人間だと見ていたのである
「初めて見るタイプの人間なのは確かだな」
人間嫌いな犬飼ポチですら横島の異質な存在感には一目置いていた
犬飼自体それほど人間と交流した経験もなく、人間を知らぬままに憎んでいたので横島の印象は人間が相手にしては悪くない
「では、人狼族の盗まれた秘宝を探して欲しいと?」
来客の対応をする横島は、目の前の二人に内心で戸惑いを感じていた
その理由は、相手がシロの父親である犬塚ジロウとフェンリル化するはずだった犬飼ポチの二人なのだから……
それは突然の事だった
犬塚ジロウと犬飼ポチの二人が、里から盗まれた秘宝の刀を探して欲しいと依頼をしに尋ねて来ていたのだ
「以前、こちらが我々の仲間の人狼を助けて頂いた事を聞いたのです。 こちらでは密かに妖怪の支援もしてるとか…… あれは世に出してはならぬ秘宝なのです。 どうかお力をお貸し下され」
二人の表情は対称的だった
ジロウは低姿勢で話を進めているが、ポチは横島を睨み胡散臭げに警戒している
「助けたと言うか、道に迷われていたので案内しただけですよ。 確かに当方は妖怪の支援もしておりますが、盗品の捜索ははっきり言うと自信がありません」
ジロウが語った仲間の人狼を助けたと言うのは、以前横島達が偶然都内で道に迷っていた人狼を助けた事であった
お金を落とし道に迷って困っていたところで、お金を貸して案内しただけである
横島はまさかそんな些細な出来事が今回の事件に影響するとは、思いもしなかった
「相手はただの盗っ人ではありません。 我々人狼族が追跡出来ないとなると、何かしらの目的があるのやもしれません。 どうかお願いいたします」
見つける自信がないと言う横島にジロウは食い下がり助けを求める
これはジロウの半ば独断の行動だが、彼はこの件が何か重大な問題になるかもしれないと危機感を感じていたのだ
「結果は保障出来ませんがよろしいですか? 刀の捜索はしますが、見つからない可能性が高いですよ」
食い下がるジロウに横島は八房捜索の依頼を引き受ける事にしていた
一昨日から八房の捜索は半ば打ち切られていたので迷ったのだが、ジロウの真剣な頼みに根負けした形である
ジロウはしばらくしたらまた尋ねてくるので、よろしく頼むと告げて帰っていく
「犬飼、気付いたか? あの事務所には人間以外の匂いや気配が多かった事に」
「ああ、詳しくはわからなかったが妖怪の匂いが複数あったな。 噂は本当だったのか……」
事務所を後にした二人は、事務所で感じた複数の妖怪の気配に驚きと困惑を感じていた
横島事務所が妖怪の支援をしてるとの噂は他の人狼の里で聞いた話だったのだが、二人は横島事務所内に生活してるだろう妖怪の匂いや気配を感じていたのである
人間と妖怪が一緒に暮らすなど信じられない二人は、横島事務所の事実に複雑な気分だった
「それにあの男ただ者でないな」
加えてジロウは横島から見た目以上の隠された力を感じており、その評価はかなり高い
妖怪である自分達への態度や表情の変化など注意深く観察した結果、ジロウは横島に八房の捜索を頼んでいたのだ
完全に信頼した訳ではないが、信義を通して頼めば決して悪いようにはしない人間だと見ていたのである
「初めて見るタイプの人間なのは確かだな」
人間嫌いな犬飼ポチですら横島の異質な存在感には一目置いていた
犬飼自体それほど人間と交流した経験もなく、人間を知らぬままに憎んでいたので横島の印象は人間が相手にしては悪くない