その日の夕方

横島はいつものように修行を終えると、老師の部屋に入っていた


「横島か… どうした？ 珍しく真面目な顔で？」

老師は真剣な表情で部屋に来た横島に話した

「老師… 相談があるのですが…」


横島は老師の前に座ると話し出した

「俺は人間の寿命を超えたいんです… もっと強くなって、ルシオラや小竜姫やタマモ達と同じ時を生きて… 守ってやりたいんです」


それは横島が悩んでいたことだった…

横島は今、ルシオラ達に守られてばかりだった

そして、ルシオラ達に比べればあまりに短い寿命だった


横島は大切な人々と共に生きる時間と…

力が欲しかった…


老師は横島を静かに見ていた

「寿命は天が決めるもの… 人間がそれを超えるなら、人間としての人生を捨てることになるぞ…」

老師は険しい表情になり話した

「わかってます。 簡単じゃないのも… でも… 彼女達の気持ちに答えるにはそれしか……」

横島は力を込めて話していた…


「本来は無理な話じゃな… だが…　お前ほどの功績があれば、神族でも魔族でも好きな方になれるぞ…」


老師は静かに話した

それは神魔界で、すでに決まっていたことだった…


アシュタロスを倒した横島は、死後に神魔の好きな方へ行けることになっていた

デタントの推進派が強く進めた話である…

だが横島は…

「俺は神族にも魔族にも成りたくありません… 同じ生命には成りたいですが… 小竜姫とルシオラ…　俺には両方大切です。　どちらかに縛られる神魔族には成れないです」

横島は自分の考えを老師に話した

老師は困ったような表情になる


「お主も難しいことを選ぶの… まあ、わからんでも無いが… 神魔の違いは力の質だ… 神族は神力… 魔族は魔力… お主が第三の道を選ぶなら、霊力のまま肉体を捨てて、神魔化しなければならない…」

老師は苦笑いしながら、横島に目指す道を簡単に説明した

「方法があるなら… それでお願いします！」

横島は真剣な表情のまま、老師に頭を下げた


「簡単ではないぞ… 神魔族は肉体を持たん。　その分魂と霊体は比べ物にならないほど、強力になる お主が神魔化するには儀式を行い、力も一から鍛え直しだ… 決断する前に、小竜姫達とよく話し合うのじゃ…」

老師がそう話すと、横島は部屋を出た


その日の夜…

食事が終わった横島はルシオラ、小竜姫、タマモを部屋に呼んでいた


「どうしたのヨコシマ？」

ルシオラが真面目な顔の横島を不思議そうに見つめた


小竜姫、タマモもいつになく真剣な横島に何の話かわからずに見ていた


いつになく緊張した空気の中、横島が口を開いた

「実は…… 俺… 人間の寿命を超えようと思ってるんだ…」

横島の話にルシオラ達は驚き見つめた…

「神族か魔族のどちらかになるの？」

最初に聞いたのはルシオラだった

「いや、神族にも魔族にもならない… 俺はこのまま神魔化しようと思ってる…」

ルシオラ、小竜姫、タマモは横島の話を聞きながら考えていた

「確かに人間の霊力のまま神魔化は可能ですが… 非常に大変ですよ…」

小竜姫は心配した様子で横島を見つめて話した

「わかってるけど… 俺は神族にも魔族にもとらわれたくない… 自由な立場で生きたいんだ…」

横島は小竜姫を見つめて答えた

ルシオラと小竜姫は理解した

神魔には義務があり、敵対するのが逃れられない運命である…

横島がそれを嫌ったのは理解出来た

自分達もそれに抵抗感はあるのだから…

「俺には神族も魔族も仲間が居る… みんな大切な奴らなんだ… 俺は自由な立場でみんなと仲間で居たい…」


横島は真剣に自分の考えを話した


「横島さん…」

「ヨコシマ…」

「横島…」

小竜姫もルシオラもタマモも言葉が無かった

特に昔の横島を知る小竜姫は信じられない思いだった…