真の歴史へ・その三

それからしばらく日にちが過ぎていくが、おキヌ達とかおりの関係は何も変わらぬまま時間だけが過ぎていた

転校早々に人間関係で問題が起きたおキヌと小鳩だが、元々二人に批はなくクラスメートの大半が好意的だった事もあり割と楽しい学校生活を過ごしている

未来ではクラス対抗戦の時に和解していたおキヌとかおりだったが、今回は転校時期の違いからクラス対抗戦の選抜テストはまだない

加えて担任の鬼道ですらもおキヌと小鳩がかおりと不仲なのに気付いてしまい、かおりが望んだ霊能での直接対決の機会は訪れないままである

おキヌと小鳩の二人が戦闘経験ない事も考慮しており、不仲のままでの生徒同士の模擬戦闘を鬼道が避けてるためであった

そのためかおりと数名の取り巻きがクラスで浮いたままになっているが、かおりの価値観としては二流の人間が傷の舐め合いをしているとしか見てない為に、クラスは微妙なまま関係が固まってしまっている

鬼道はこの問題を多少気にしてはいるが集団生活を送る以上は好き嫌いがあるのは当然だし、双方共に表立って問題を起こさない為に現状ではこれ以上介入するつもりはないようだった

その結果歴史の改変の微妙な影響に横島は多少複雑そうだったが、当分見守るしか出来ないのは変わらない



その一方で歴史の流れは、横島達の思わぬ場所にも影響を及ぼし始めていた

そこは人狼の里と呼ばれる場所である


「これは一体……」

それは突然の出来事だった

人狼の隠れ里の村の奥に奉られていた《秘宝八房》が姿を消していたのだ


「長老、里の中にはありません。 誰かが持ち出した可能性も否定出来ませんが、外部からの盗っ人の可能性も……」

多くの人狼達が八房を探す中、シロの父である犬塚ジロウや犬飼ポチも必死に八房を探している

本来の歴史であれば人間を恨んだ犬飼ポチが持ち出すはずだったのだが、彼が持ち出す前に八房が消えてしまったのだ


「おのれ……、人間が盗んだに違いない!!」

「まて犬飼、まだ犯人はわかってないのだ。 仮に人間が盗んだにしても、我々人狼に全く気付かれずに盗むなどただ者ではない」

密かに八房を持ち出す事を考えていた犬飼ポチは苛立ちでより人間を恨んでいくが、犬塚ジロウが落ち着かせようとする


「西の隠れ里では街に出た人狼の一人が行方不明になったと聞く。 何か良くない事が起こらねばいいが……」

長老は動揺する仲間達を落ち着かせると共に、少し前に西の人狼の隠れ里から仲間を探して人狼が訪れて来た事を思い出す

街に買い物に出掛けたっきり帰らない仲間を、西の里の人狼が探して尋ねてきたのだ

あの時は人間の街に憧れ失踪したのではと長老達は考えていたが、あれも事件か何かに巻き込まれた可能性も否定出来ない



その後八房を探しに行くと言う者と放っておけばいいと言う者で人狼達は意見が分かれるが、長老は日本各地にある仲間達に警告も含めて知らせに行かせる事を決める

ただの盗っ人ならいいが、八房の特性を知る以上は仲間には知らせる必要があったのだ

その任に長老は犬塚ジロウと犬飼ポチを宛てて、二人が他の隠れ里に向かう事になる

奇しくも未来で戦った二人が行く事になってしまっていた
78/100ページ
スキ