真の歴史へ・その三

「あの人が横島忠夫…… 隣の人は助手かしら? それにしても生意気ね。 まさかあの子、美神お姉さまとも親しいなんて……」

一方やじ馬の最後尾には、おキヌと小鳩を睨むかおりの姿があった

同じクラスなため帰宅時間が同じなのは当然だし、かおりは霊能の修行を理由に部活動をしてないのですぐに学校から帰っていたのだ


そんなかおりの興味は同年代にも関わらず事務所を持つ横島と、令子と親しいおキヌに向いている

横島に関してはGS協会の広報紙で顔写真を見ただけであり、能力に関しても霊的格闘しか知られてない

弟子としてGS試験を受けた雪之丞が同じ霊的格闘と魔装術だったため、魔装術使いなのかとの噂があるくらいである

まあかおりとしてはどちらかと言えば、尊敬する令子と親しいおキヌに苛立ちを募らせていた



「とりあえず、敷地内で待機するか」

「そうですね。 ちょうどいいですから、三人も除霊を見学しますか?」

一方空き家の前の道路で待機していた横島達だが、見物人の視線の居心地の悪さに敷地内で待機する事に決める

加えて小竜姫はそのついでに、おキヌ達三人に除霊を見学させようと考えていた


「私達も中で待機しましょ。 貴方、何か飲み物を買って来て」

横島達が敷地内で待機する事にしたのに続き、令子も敷地内に入っていく

正直見物人の視線がうざかったのは令子の方だったのだ

結局双方とも敷地に入り、比較的安全そうな庭の隅で待つ事になる


「そういえば、また人を増やしたんですって? そんなに景気いいの?」

敷地内に入りホッとしたのか、令子は横島にふとした疑問を投げかけていた

生き返ったおキヌが霊能の修行を始めていた事は先程始めて聞いて驚いたが、雪之丞と小鳩を含めて弟子が三人は新人GSとしては多いのだ

しかも愛子やメドーサや美衣とケイなど人外も多く、普通には考えられない規模である


「うちは霊具はほとんど自作ですから、人件費が多くても大丈夫なんですよ」

令子としては横島の儲かり具合が気になるが、正直横島達はそれほど儲かってない

収入も多いが妖怪達への支援やルシオラの開発費に消えている

基本的にお金を貯める考えのない横島達ならば問題ないが、令子ならば無理な経営だった


「いいわね~、私もGSに戻りたいわ」

自由気ままにGSをしてるように見える横島に、令子は思わず愚痴をこぼしてしまう

小竜姫達が影で何をしてるのか知らないが、令子から見れば横島は小竜姫の庇護の元で自由気ままにGSをしてるように見えていたのだ


「これが今回の除霊依頼書です。 実際には除霊する前に現状の調査が必要です。 依頼書と現状が違う場合は再度依頼人との交渉も必要になります」

一方横島が令子の相手をしてる間に、小竜姫は除霊の事務的手順を三人に説明していた

愛子は元よりおキヌと小鳩も除霊現場に出た経験はなく、おキヌの幽霊時の経験を除けば三人共に初の現場である

小竜姫は事務的手続きの手順を簡単に説明していくが、これは横島達が現場の調査から除霊までを自前で行っているからだ

除霊前に調査して依頼書と違う場合は、再度依頼人と報酬などの話し合いが必要となる

まあ横島達の場合は多少依頼書と違っても問題ない為、滅多に再交渉はないが……

ちなみに令子はほとんど事後交渉で済ますタイプである

予測不可能だったと言いつつ、不足分をキッチリ回収するのだ

まあそれはGS業界売上No.1の令子にしか出来ないことだが……

一般GSが令子のような手法を用いれば、客が来なくなるだろう


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