真の歴史へ・その三

それから数日後、おキヌと小鳩はクラスに馴染んで平穏な学生生活を続けていた

かおりは相変わらず二人に微妙な対抗意識を燃やして何かあるたびに実力差を示そうとするが、おキヌと小鳩は全く取り合わない

そもそも二人にはクラスメートと争うつもりなどないのである

まあ個別に言えばおキヌは、かおりの考えに全く気付いてなく凄い人だという認識しかないし

小鳩の方はかおりの意図に気付いているが、気付いてないフリをして対立を避けている

貧乏神で苦労しただけに人に対してはおキヌよりも数段敏感だが、性格上かおりと争うつもりなどない

GSを目指してる訳でもない小鳩にとっては、霊能力で対抗意識を燃やされても困るだけだった



(目障りですわね。 あの二人)

一方かおりはそんな二人に苛立ちを募らせている

それと言うのもおキヌと小鳩は対立するつもりが全くないが、クラスメート達は微妙に違う

霊能力や学力が高い事を盾にクラスメートですら見下すかおりに、嫌気がさしてる者が予想以上に多かった

将来のGS候補としてライバルなのは間違いない為かおりのやり方が間違ってる訳ではないが、一年の早い時期からクラスメート相手に実力差を示して威張るかおりに共感する者は多くない

その点で言えば高い霊力にも関わらずそれを気にもしてないおキヌと小鳩は、クラスメートに予想以上に歓迎されている

かおりと一部の取り巻きは別にして、他のクラスメートは普通の学校生活を望んでいた



(悪い人じゃないんだけどねー)

一応同じクラスとはいえ妖怪なため立場が微妙に違う愛子は、かおり対おキヌ・小鳩の対立構造が出来つつある現状に困っている

霊能や授業には誰よりも真剣に挑んでいるかおりだが、対人面の悪さが目立ち過ぎなのだ

愛子は妖怪な為にかおりが対抗意識を持たないし、愛子もかおりを立てて上手くやっていたが、クラスメートが予想以上にかおりに対して反感を持っている事も理解していたのである


(鬼道先生もその辺りはノータッチだし……)

真面目で生徒や保護者に評判のいい鬼道だが、生徒同士の微妙な対立にはノータッチだった

これは誰も問題を起こしてない事が一番の理由だが、一般生徒達の普通の学校生活を送りたいという密かな思いに鬼道が気付いてない事も影響している

真面目で生徒思いの鬼道だが、この男もかおり同様に普通の子供として育たなかった為に人間関係の問題は苦手であった


(何かやらかさなきゃいいけど……)

かおりが微妙に追い詰められてる現状に愛子は僅かに危機感を募らせている

クラスメートを相手に力でしか接する事が出来ないかおりを愛子は哀れにも感じるが、このままではおキヌと小鳩が被害を被る可能性があった



(私は認めません。 あんな才能に甘えた連中のことなど……)

おキヌと小鳩がクラスに溶け込めば溶け込むほど、かおりは苛立ちを募らせていく

ロクに戦ったこともないと自認する二人なだけに、才能に甘えて高い霊力を有してるようにかおりには見えるのだろう

最早、実力差の問題ではないのかもしれない

高い霊力を持つ二人が普通の生徒のように学校生活を楽しむ姿すら、気に入らなく感じ始めてるのだから


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