真の歴史へ・その三

それから夕方になり六道女学院より帰ったおキヌと小鳩が楽しそうに学校の話をするのを、横島達はホッとした様子で聞いていた

横島の記憶ではかつてのおキヌも学校で上手くいっていたのでさほど心配はしてなかったが、それでもやはり不安が無かった訳ではない


「さて、それでは今日も初めましょうか」

そして異界に移動したおキヌと小鳩は、いつものように霊能の修行を始める

基礎中の基礎を徹底的に行う小竜姫の修行は、霊能アイテムの恩恵を受ける現代のGSでは行わないほど古いやり方だった

しかしその修行が、小竜姫という最高の指導者にかかれば効果的なのは確かである

二人はいつものように霊力のコントロールの修行を行っていく


「次は戦闘訓練に入りましょうか」

霊力の基礎の次は戦闘の基礎を行っていくが、こちらは体力作りから始まり身体の動かし方などの基礎である

六道女学院に入る以上最低限の戦闘技術は必要だという事から最近教え始めたが、素直な二人なだけに修行は順調だった


「今日からは簡易式神を使用した組み手を始めましょうか」

一通り基礎が終わり休憩を挟んだのちに、小竜姫は式神ケント紙を使った対戦を始めて修行に取り入れようとしていた

これは愛子から聞いた六道女学院のカリキュラムを小竜姫なりに考えた結果、授業の前に二人に対戦経験が必要だと判断した為である


「始めは出来なくて当然なのですから、気楽に行きましょう」

式神ケント紙を使用するとはいえ始めての対戦に表情が強張る二人に、小竜姫は優しく語りかける

元々GSになる事まで考慮してない二人の修行なだけに、誰かと戦うというのは始めてなのだ

無論霊能の基礎には肉体的鍛練も含まれているため、体力作りなどの基礎はずっと行ってるのでおキヌにしても未来よりも身体能力は高い

だが性格上戦いに向かない二人なだけに、対人戦の修行は慎重に行う必要があった


「とりあえず、相手の動きをよく見て慣れて下さい」

始めての対戦で小竜姫は、二人に戦わせないで式神の動きを見せる事だけに専念させる

戦う恐怖や相手を傷付ける恐怖がある二人には、戦う前に相手をよく見る事から始めなければならない

そのまま一人ずつ式神の動きを見させて霊力の流れを読ませていくのだが……


「始めてにしては、かなり見えてるわね。 二人ともほとんど見切ってるわ」

最弱クラスの式神とはいえおキヌも小鳩も見る事だけは、ほぼ完璧だった

修行風景を見ていたタマモが少し驚くほど、予想より進むのが早い


「彼女達は私達や雪之丞さんの修行なんかをいつも見てましたからね。 見る事だけは多くの経験を持ってます。 やはりあれが生きてますね」

それは二人の環境の問題だった

横島達の修行や雪之丞・ピートの修行などを二人はよく見ていたのだ

始めはただ凄いと感じただけだが、二人が毎日見る事によって見る事に関しては成長していたのである

横島達四人の霊能に触発されて二人の霊能もまた伸びていた事もあるし、修行とはいえ並みのGSでは見る事が叶わないほど高レベルの戦いを見ていた結果が二人に現れていた


「この分だと戦闘も飲み込みが早そうね」

「それに関してはあまり進めたくないんですよね。 彼女達にはまだ早いというのが私の本音です」

タマモは予想以上のスピードで成長する二人が楽しみなようだが、小竜姫はあまり二人の成長スピードを上げるのには慎重である

戦う覚悟も意味も解らぬ二人を、戦いの道に進ませるのはまだ早いと考えていたのだ

まあ学校の授業もあるので最低限の基礎は教えるが、護身用程度に納めたいのが本音だった


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