真の歴史へ・その三

(ちょっと気に入らないわね。 素人のクセに生意気だわ)

クラスメートに囲まれるおキヌと小鳩から離れたかおりは、心の中に僅かだが苛立ちを感じていた

少しばかり霊力が高いからと言って、周りにチヤホヤされるのが気に入らない


(早めに実力差を見せ付けた方がいいかもしれませんね)

おキヌや小鳩のみならずクラスメートにも実力差を見せ付けて、誰が一番かしっかり解らせないといけないとかおりは考えを巡らせていく

GSの世界は実力が全てであり強い者が上に立つべきだと、本気で考えているかおりとしては当然の考えなのだが……



弓かおりは実力もあり将来性も期待される六道女学院でもトップクラスの霊能者だが、彼女は世間知らずだった

確かに幼い頃より親に強要された霊能の修行により素晴らしい実力を手に入れているが、その半面で友達を作ることも出来なかった為に人間関係は壊滅的だし、お世辞にも精神的に素晴らしいとは言えなかったのである



一方ルシオラは自身の研究室にて、新たな発明を横島達に披露していた


「これは大魔球とかってやつか?」

横島達の目の前に現れたのは、ピンポン玉サイズの真ん中に目玉がある黒く丸い玉だった

それはかつてのアシュタロス戦においてルシオラ達が作った造魔の小型版といった感じである


「ええ、大魔球Jrよ。 妙神山近辺に作った妖怪保護地区の警備要員にするの」

ミイとケイの問題の後にルシオラ達は急遽保護地区の守りを強化しており、現在はタマモの式神により常時監視しているが場所が広大なだけに少々大変だった

タマモの負担軽減の為にルシオラが監視件護衛用の兵鬼としてかつての造魔・大魔球一号を模した新たな兵鬼を開発していたのである

保護地区にはすでに百人以上の妖怪が生活しているが、基本的に法律がある訳でもなく争いさえしなければ自由に生活していいのだ

従ってかなりの監視件護衛要員が必要となる

ルシオラの研究室のホストコンピュータを中心に大魔球Jrがその役割につくらしい


「それはよかったです。 流石に鬼門だけでは心許ないですからね」

現在保護地区の警備要員は鬼門の二人だけである

妙神山には老師の分身が生活しているが、流石に分身とはいえ老師に警備させる訳にもいかないため鬼門が一日何度か見回りしていたのだが小竜姫としては少し不安だったらしい


「現状ではこれがベストだと思うわ」

横島を含めルシオラ達は保護地区の守りをいろいろ考えたが、土地が広大なためにこれ以外方法がなかった

人狼族のように結界で隠すことも考えたが土地が広すぎるために難しいし、何より基本的に保護地区の出入りは自由なのだ

人間に不当に終われた妖怪が逃げ込んだり、妖怪達も人間の町に買い物に出掛けたりするため結界で封鎖もあまりいい方法ではない


「それで奴らは手を出しそうなのか?」

「保護地区は今のところ平和そのものよ。 非公式とはいえGS協会も関わってるし、唐巣神父の名前も大きいわ」

妖怪の密売組織を警戒していた横島だったが、予想に反して保護地区には手を出して来なかった

GS協会や六道と繋がりが深い唐巣の存在は予想以上に大きいようで、あえてケンカを売ってくるような真似はして来ないようだ


「奴らは徹底的に叩き潰さないとな」

未来では知らなかった事件の裏側の繋がりに、横島は不快そうな表情で根本的な解決をしなければダメだと考えていた


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