真の歴史へ・その三

(なっ…… 何故あれほどの霊力を!?)

驚いてないのはおキヌと小鳩と愛子のみで、鬼道ですら驚きを隠せない様子だった

通常のGSは霊力が強い者は普段から体に纏う霊力も強いのが普通なのだが、小鳩の霊力は普段とは段違いに高い

しかもかおりと同じように安定した霊力の解放に、誰も驚きを感じていたのだ


「あの……、何か間違ってますか?」

「いや、それでええ。 予想以上に霊力が高くてみんなびっくりしてるだけや」

周りの変化に小鳩は不安そうに鬼道に言葉をかけるが、問題がないと知るとホッとしたように霊力の解放を止める


「お疲れ! 今日もいい調子ね!」

「緊張しました……」

元に戻って来た小鳩に愛子は笑顔で声をかけるが、小鳩はかなり緊張したらしく終わってホッとしている

その後おキヌの時もクラスメートが同じように驚いて、その日の授業が終わっていた


(あれで数ヶ月とは…… 小竜姫様が直に教えてるっちゅう話はほんまやな)

授業後、鬼道が驚いていたのは二人の霊力コントロールである

霊力コントロールだけで言えば、二人の実力はすでに一流の域に達していた

現代の霊能者が霊力コントロールをあまり重要視してないという事情はあるが、式神使いとして幼い頃から血を吐くような特訓を重ねて来た鬼道が一瞬嫉妬するほどの実力なのだからよほどなのだろう

まあ二人の場合はGSになる事が前提にないため、一般生活において霊障に合わないように霊力コントロールを重点的に修業した成果でもあるのだが、鬼道やクラスメートはそこまで知らない訳だし


(あの二人の才能が凄いのか小竜姫様が凄いのか解らんけど、指導が難しいな)

数ヶ月で一流並みに霊力を扱えるようになった二人に今後どう指導すればいいのか、鬼道は悩んでしまう

下手な指導して小竜姫の機嫌を損ねる事だけは避けなければならないのだから

実際小竜姫がそんな細かい事で機嫌を損ねるなどないが、鬼道や六道女学院側はわからないのだから



「あなた達、本当に霊力を学んで数ヶ月なんですの?」

一方教室に戻った二人は、再びクラスメートの質問責めにあっていた

転入生がクラスで威張り気味のかおり以上の霊力な事に、誰もが驚きを隠せないのである


「はい、そうですよ。 戦ったりとかは全く出来ないですし」

問い詰めるように厳しい表情のかおりにおキヌは若干怯え気味に答える

何故それほど厳しい表情で問い詰められるのかおキヌにも小鳩にもわからない

実際二人が戦いを学び始めたのはごくごく最近である

六道女学院に通う事が決まって以降、学校で必要になる基礎の戦闘修業と神通棍や霊体ボーガンなどの扱い方をようやく学び始めた段階であり、実戦経験どころか対人の手合わせすらした事がないのだ


「数ヶ月であそこまで出来る人なんて聞いた事がないわよ」

「ほぼ毎日修業したからではないでしょうか?」

クラスメート達は二人が天才なのかとか、どんな修業をしたのかとか根掘り葉掘り聞くが二人は普通に修業しただけだとしか言えない


実際おキヌと小鳩の修業は普通の霊能者の修業と比べると、その密度がまるで違っている

数ヶ月で普通の霊能者の数年分の修業を無理なく行えたのは、まさに妙神山修業場の管理人だった小竜姫の実力としか言いようがない

ルシオラやタマモも二人の修業には積極的だし、神魔人界全てを見ても最高クラスの環境なのは間違いなかった


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