真の歴史へ・その三

緊張気味の二人だが授業はいつも通り淡々と始まっていく

先程愛子も言っていたがこの日は霊力の解放であり、基礎中の基礎である

早くスムーズに無駄なく霊力を解放出来るようにならなければダメだった


「まずは弓、手本見せて貰おうか」

担任の鬼道に最初に指名されたのは、やはりかおりである

名実ともにクラスのナンバーワンであるし、実際クラス委員もして表も裏もクラスを仕切っているのだ


(素人の転入生とはいえ実力を示す必要がありますね)

チラリとおキヌと小鳩を見たかおりは、新しく転入して来た二人に自分の実力を示す必要性を感じていた

この弓かおりという少女は極度の実力至上主義である

それはオカルト業界では当然だし比較的ありふれた価値観だが、高校という学生生活にまでそれを持ち込むのは珍しい方だった

霊能も勉強も人一倍頑張っており、他者との実力差を示すことにより人の上に立とうとしている少女である


「弓さん、今日はまた気合い入ってるわね」

「あの人、すぐ他人を従えたがるから」

いつもに増して気合いの入ったかおりに、クラスメートの一部は呆れたような口調で陰口を囁く

名実ともにクラスのナンバーワンなのは誰もが認めるが、クラスの大半はかおりに対していい印象がない

基本的に上から目線のかおりには取り巻きの者以外は友達らしい友達はいなく、かおり本人も実力がない者と関わろうなどと思わないので双方とも問題ないのだが……

あえてかおりと対立するのは一文字魔理くらいである



そんなかおりが霊力を解放した瞬間、クラスメートからざわめきが起こった

霊力の高さも質も他のクラスメートとは段違いで、プロのGSのレベルに届いているのだ


「弓さんはこのクラスで一番実力があるわ。 現状でもGS試験に受かる実力があると言われてるしね」

クラスメートとは違いイマイチ反応が薄いおキヌと小鳩に愛子が現状を説明するが、二人は何故クラスメートがそれほど驚くのかあまり理解出来ない

確かにかおりの霊力は高くプロと比べても十分通用するが、それでもせいぜい二流のGSがいいところなのだ

現状のかおりは、霊力量で冥子に圧倒的に劣る鬼道より更に少ない霊力量しかない

戦闘経験はないとはいえ横島達と共に居る二人にとって、かおりの霊力は驚く範囲ではなかったのだ


(あの二人、実力も分からないほど素人なのでしょうか?)

対して気合いを入れて霊力を解放したかおりは、無反応なおキヌと小鳩にその評価がますます下がっていた


(あの調子なら問題ないでしょうね)

相手の実力も分からない素人ならばクラスで問題を起こす可能性もないだろうと判断したかおりは、二人への興味がなくなったようでその後は取り巻きの者達とおしゃべりしたりとおキヌや小鳩を見ることはなかった


「次は花戸、無理はせえへんでええからな」

それからいよいよ小鳩の番になるが、正直鬼道は二人の実力を計りかねている

小竜姫の存在により過剰な事前の対応が目立ったのだが、イマイチ二人の実力についてはあまり感じないのだから


「はい、頑張ります」

緊張気味の小鳩は、ふと小竜姫が居ない場所で霊力を使うのが初めてなのを思い出す

いつもと同じようにやれば大丈夫だろうと気合いを入れて霊力を解放するが……、次の瞬間クラスメートは静まり返って唖然とした様子で小鳩を見つめている


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