真の歴史へ・その三

「そう……、小竜姫様がね」

ところ変わって現代に戻った西条と令子は美智恵に過去での出来事を説明するが、その表情が険しいまま無言になってしまう


「あの二人は700年前から一緒なの?」

令子の疑問は突然中世に現れた小竜姫とタマモに向いていた

神族の小竜姫と妖怪のタマモの関係はイマイチわからないが、700年前から活動してても不思議ではない

どうやらカオスは横島とルシオラ達の介入を何も語らなかったらしく、令子と西条は小竜姫達が時間移動したと考えるよりは過去の二人ではないかと推測している


「私にもわからないわ。 そもそも小竜姫様クラスの神族が人界で暮らしてる事自体が異例中の異例なのよ」

令子の疑問に美智恵は何も答えれなかった

美智恵が知る事実や歴史から見ても、横島や小竜姫の行動は疑問が残るのだ

小竜姫の後ろ盾が竜神族と斉天大聖老師なのは理解しているが、正直美智恵も誰がどこまで絡み小竜姫を動かしてるのか全くわからない

いかに美智恵とはいえ誇り高く神族としての生き方を貫く小竜姫が、半ば神族から逸脱しているとは思いもしないようである


「しかし過去で会ったと言う事は、小竜姫様は令子ちゃんの能力を知っていた事になりますね。 恐らく先生の能力も知られているのでは?」

「知られていても不思議じゃないわね」

一方西条は今回の件が、美智恵と小竜姫の微妙な関係に関わりがあるのではと感じていた

美智恵は小竜姫の事になると何も話さないが、過去に何か関わりがあるのは西条も令子も感じているのだ

西条は以前から聞きたかった疑問が他にもいくつかあるのだが、それ以上尋ねるのを拒否するような美智恵の表情に言葉を続ける事が出来ないで終わってしまう



「西条さんどう思う?」

美智恵の部屋を後にした令子は納得がいかないらしく西条に話しを振るが、西条の口もまた重かった


「あまり安易な事は言えないが、普通に考えると小竜姫様は誰かの意向で動いているのだろう。 …………もしかすれば先生や令子ちゃんは、神魔が介入するような問題に関わりがあるのかもしれない」

美智恵の行動が令子を守る事を中心に考えているのは西条も理解している

そして魔族に狙われ神族に助けられたとなれば、二人は神魔が介入するほどの何かに関わってると考えるのが自然だった


「うーん…… ママといい小竜姫様といい、私の知らないところで私に関わる何かを好き勝手にされるのって好きじゃないのよね」

「気持ちはわからないでもないが、令子ちゃんの事を一番考えているのは間違いなく先生だよ」

自分の知らないところで何か大きなモノが動いてる現状に、令子はため息をはいてしまう

今のところ時間移動絡みとしか考えられないが、正直まともに使えない能力だしイマイチ実感がない

それに面倒事に関わりたくない気持ちと、自分に関わる何かを他人がどうこうするのが嫌な気持ちで複雑である

結局西条は令子をなだめつつ、もう少し様子をみる事を進めていた

西条自身も今回の事件で予想以上に大きな裏がある事を感じており、下手に動けばロクな結果にならない事は理解している


「しばらくGSもオカルトGメンも辞めて、バカンスでも行こうかしら?」

慎重な西条と対称的に、令子は全部投げ出して逃げ出したいとさえ思っていた

基本的に他人はどうでもいいし、儲け以外で神魔と関わりたくなどないようである

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