真の歴史へ・その三

その後、横島とルシオラは地獄炉とヌルの施設をカオスに任せ城を去った

一方小竜姫とタマモもまた、呆然とする令子と西条に何の説明もないままに消えている

残された令子と西条は意味が解らずに混乱するが、カオスの協力により当初の予定通り未来へ帰っていく



「すいません。 私の失敗です」

鬼天号に戻った小竜姫は横島達に頭を下げる

突然の令子の行動に対応出来なかった小竜姫は、今回は自分の失敗だと考えていた


「仕方ないわ。 あのタイミングでヌルを滅ぼして美神を守るのは無理よ。 超加速を使っても常時エネルギー供給を受けるヌルを一瞬で滅ぼすのは簡単じゃないもの。 仮に滅ぼしてもあの爆発は防げなかったわ。 美神と西条が一カ所に居たら別だったけど」

謝る小竜姫を責める者はいなかった

タマモは客観的にあの状況を説明するが、それはやはり致し方ない状況である

小竜姫には奥の手の超加速があるが、あれは霊力消費が激しく超加速中には小竜姫の攻撃力が通常時よりかなり落ちるのだ

仮にあの瞬間に小竜姫が超加速を使っても、常時エネルギーを供給されるヌルを一撃で仕留めるのは難しい

一撃で仕留めなければ爆発が来るので、小竜姫は令子を守らねばならない

結果的に言えば逃げられるしかなかった状況である

まあもし令子と西条が一塊になっていたらタマモが二人同時に守って、小竜姫がヌルを仕留めた可能性もあるが全ては憶測でしかない


「あの時、美神さんが逃げてれば多分タイミングは上手く行ってたのね。 爆発と地獄炉の停止はほぼ同時だったから」

両方見ていたヒャクメが補足するように説明を続けるが、計画自体は悪くなかった

小竜姫の介入もギリギリのタイミングだったし、ルシオラの介入もギリギリである

あの時令子が動かなければ、全ては計画通りのタイミングだった


「よほど俺達と美神さんの相性が悪いんだな。 まさか美神さんの介入で失敗するとは……」

あのタイミングでの令子の横ヤリは、令子を良く知る横島ですら予想出来ない事である

未来の令子ならば、流れを読みそんなマズイ介入はしなかっただろう


「経験不足に精神的未熟さがこんな場面で出るなんてね」

ため息混じりのタマモの言葉は重かった

全ては横島達が過去に来た影響が原因なのだ

「よくわからんが、みんな無事だったんだからいいんじゃねえか? 失敗したならまたやり直せばいいだけだろ」

逆行後最大の失敗に落ち込む横島達に光を与えたのは、雪之丞の何気ない一言だった


「そうかもね…… 私達はちょっと神経質になりすぎていたのかもね」

重苦しい空気が和らぐのをその場に居た者達は感じる

未来を知らないゆえに雪之丞はあんな事を軽く言えたのだが、それが正しいのも確かだった


「結果的に考えれば運命に決められた負けだったのかもね。 ここで生き残ったヌルは未来で再び活動を始めて私達の敵となる」

今回の結果でタマモは一つの確信を持っている

現代において歴史にない敵とその黒幕

それがヌルなのではないかとの確信を持っていた


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