真の歴史へ・その三

「悪いがお前のモルモットになるつもりはない」

「私もタコの奴隷なんてゴメンだわ」

ヌルの最後通告に西条は冷静に、令子は挑発するような態度で答える

その分かりきっている答えにヌルも特に反応しない


「では終わらせましょう。 もうアイテムはないようですし、次は防げないでしょう?」

ヌルは戦いながらも冷静に二人の戦いを見つめていた

西条は少し前から銃の弾が切れているようで銃を撃たないし、令子もお札や精霊石を全て使いきったようでしばらく使ってない

次の攻撃が最後だと確信しているようだ



そのまま西条と令子が何も答えないで無言を貫く中、ヌルはタコ足から炎と雷の魔法を同時に放出する

先程までの様子見と違い、現時点での最大出力を込めた炎と雷は桁違いの威力だった


「西条さん、引くわよ!!」

その瞬間令子は隠し持っていたカオス製のお札をばらまき、遂に撤退するべく西条を連れて逃げ出していく

撤退するなら確実に逃げ切れる場面でなくてはならない

令子は力とアイテムを温存して、ヌルが最後の勝負を仕掛けて来るのを待っていたのだ

いくらヌルのパワーが無尽蔵でも同じ攻撃をするには溜めが必要だし、最低限逃げ出す隙は出来るだろうと確信している



「クッ……、まだそんな物を……」

ヌルの攻撃と令子の攻撃の激突で、付近の場所は爆風に見舞われていた

爆発した炎と煙りで部屋の中の視界はかなり悪くなっている


「逃げられると……」

どうせ逃げられるはずはないと怒り心頭のヌルだが、その瞬間背後に冷たい冷気を感じる


ザシュッ!!


振り向く隙もなかった

突然背中を首から斜めに斬り裂かれたヌルは、何が起きたのかわからない


「きっ……きさま……、何者だ!!」

身体中を駆け巡る痛みを堪えたヌルが見た物は、赤髪の若い女性だった

その身体からは霊力の類は感知出来ずに一見無力な人間に見えるが、今のヌルに一撃でこれだけのダメージを与えれる人間など存在するはずがないのだ


「申し訳ありませんが、貴方にはここで滅んで頂きます」

凛とした雰囲気を纏いヌルを斬りつけたのは小竜姫である

出来るだけ令子と西条には見つかりたくない小竜姫は、二人が逃げ出すタイミングを待っていたのだ


「その剣は……、まさか……!?」

小竜姫が持つ神剣を見て表情が変わるヌルは、恐怖の表情を浮かべて一歩一歩と後ずさりしていく



「馬鹿な……何故小竜姫様が!?」

「この時代の小竜姫様かしら?」

瀕死のヌルと対峙する小竜姫の姿は運悪く西条と令子に見られていた

逃げ出した二人だが、ヌルが追って来ないのを疑問に感じて止まってしまったのだ

追って来ないヌルに罠かと疑問を感じた令子が止まっていたのである



「チャンス!」

この時、固まる西条の隣に居た令子は即座に動き出していた

ヌルは小竜姫で精一杯で背後ががら空きなのである

倒せる時に倒すのが令子の戦い方であり、利用出来るのは何でも利用して勝つのが美神令子の戦い方なのだ

今なら確実に仕留められると令子は確信しているが……



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