真の歴史へ・その三
(妙ですね…… この二人の余裕はどこから来るのでしょうか?)
膠着状態のまま戦いを続けていたヌルだが、令子と西条が隠している余裕が気になっていた
本来魔族と戦う人間に有りがちな相手を倒そうとする必殺の気配もない
まるで何かを待っているような態度なのだ
先程まではカオスが何かを仕出かすと思い警戒していたが、一向にカオスの動きがないのに疑問を感じつつあった
さて何故ヌルが未来に無かったこんな疑問を感じる余裕があるかと言えば、カオスの作戦の違いが影響している
本来奪われるはずだったマリアが、横島の代わりに慎重な性格の西条が居た事により奪われなかった
その僅かな違いがカオスの作戦に影響して、本来はカオスを裏切ったフリをするはずだったのがカオスと共同で乗り込むという違いになっている
予めカオスと手を組んで乗り込んだという事実に、ヌルは未来よりも慎重に令子達と戦っていた
全てはカオスの頭脳を警戒するが故に……
そしてもう一つ重要なのが、素人の横島と一流の西条の違いである
素人で未知数な横島は良くも悪くも戦場を引っ掻き回していた
その行動がまた敵を惑わせる一つの罠になっていたのだが、今回横島の代わりに来た西条は一流の霊能者である
あの当時の横島と比べれば実力は間違いなく西条が上だが、半面で西条の性格上相手からは読みやすい人間である事も影響していた
強さで言えば現在の令子と西条の方が上だが、令子と西条の組み合わせではヌルに落ち着く余裕を与えてしまっている
その僅かな歴史の違いから来る余裕が歴史の一つのターニングポイントになる事に、この時は誰も気付けないままだった
「貴方達は何者でしょうか? 特に貴方の持つ銃は見事です。 始めはカオスが作ったのかとも思いましたが、違う気もします」
本来の姿であるタコの魔族に戻っているヌルだが、西条の銃を指してふと疑問を語り始める
本来はもう知っているはずの未来から来た事を知らない事が、ヌルの知的好奇心を刺激していた
西条の銃や令子の神通棍など、この時代では有り得ないアイテムにヌルは警戒と興味を持ってしまったのだ
これもまたヌルの精神的余裕が生み出した一つである
「残念だが疑問には答えられないね。 そちらが降伏して全て自白すれば話してもいいが」
西条としてはヌルに弱みを見せる事なく対峙するが、ヌルはニヤリと意味深な笑みを浮かべる
「つまり秘密があるという訳なのですね。 殺そうかと思いましたが、生かして捕らえて貴方達の秘密を暴くのが先でしょうか」
西条の答えは間違ってはないが、ヌルに秘密がある事を見抜かれてしまう
やはり西条は魔族との交渉には向かないようだ
「私としてはアンタを捕らえて背後関係を聞きたいわね。 人造モンスターなんかを作って何がしたいの?」
交渉下手な西条に令子は思わず愚痴をこぼしたくなるが、それよりもこれ以上西条が余計な事を悟られないように話の主導権を握ろうとしていた
「私は自分の研究成果を世界に広めたいだけですよ。 貴方達は知らないだろうが、力を得る為には魔族と喜んで手を結ぶ人間は意外に多いのですよ? 貴方達の周りの人間がそうでないと言い切れますか?」
令子の問い掛けにヌルは意味深な笑みを浮かべたまま淡々と答える
まあ正直に真実を話す訳はなく、逆に西条と令子が不安になりそうな事を話すだけだが……
膠着状態のまま戦いを続けていたヌルだが、令子と西条が隠している余裕が気になっていた
本来魔族と戦う人間に有りがちな相手を倒そうとする必殺の気配もない
まるで何かを待っているような態度なのだ
先程まではカオスが何かを仕出かすと思い警戒していたが、一向にカオスの動きがないのに疑問を感じつつあった
さて何故ヌルが未来に無かったこんな疑問を感じる余裕があるかと言えば、カオスの作戦の違いが影響している
本来奪われるはずだったマリアが、横島の代わりに慎重な性格の西条が居た事により奪われなかった
その僅かな違いがカオスの作戦に影響して、本来はカオスを裏切ったフリをするはずだったのがカオスと共同で乗り込むという違いになっている
予めカオスと手を組んで乗り込んだという事実に、ヌルは未来よりも慎重に令子達と戦っていた
全てはカオスの頭脳を警戒するが故に……
そしてもう一つ重要なのが、素人の横島と一流の西条の違いである
素人で未知数な横島は良くも悪くも戦場を引っ掻き回していた
その行動がまた敵を惑わせる一つの罠になっていたのだが、今回横島の代わりに来た西条は一流の霊能者である
あの当時の横島と比べれば実力は間違いなく西条が上だが、半面で西条の性格上相手からは読みやすい人間である事も影響していた
強さで言えば現在の令子と西条の方が上だが、令子と西条の組み合わせではヌルに落ち着く余裕を与えてしまっている
その僅かな歴史の違いから来る余裕が歴史の一つのターニングポイントになる事に、この時は誰も気付けないままだった
「貴方達は何者でしょうか? 特に貴方の持つ銃は見事です。 始めはカオスが作ったのかとも思いましたが、違う気もします」
本来の姿であるタコの魔族に戻っているヌルだが、西条の銃を指してふと疑問を語り始める
本来はもう知っているはずの未来から来た事を知らない事が、ヌルの知的好奇心を刺激していた
西条の銃や令子の神通棍など、この時代では有り得ないアイテムにヌルは警戒と興味を持ってしまったのだ
これもまたヌルの精神的余裕が生み出した一つである
「残念だが疑問には答えられないね。 そちらが降伏して全て自白すれば話してもいいが」
西条としてはヌルに弱みを見せる事なく対峙するが、ヌルはニヤリと意味深な笑みを浮かべる
「つまり秘密があるという訳なのですね。 殺そうかと思いましたが、生かして捕らえて貴方達の秘密を暴くのが先でしょうか」
西条の答えは間違ってはないが、ヌルに秘密がある事を見抜かれてしまう
やはり西条は魔族との交渉には向かないようだ
「私としてはアンタを捕らえて背後関係を聞きたいわね。 人造モンスターなんかを作って何がしたいの?」
交渉下手な西条に令子は思わず愚痴をこぼしたくなるが、それよりもこれ以上西条が余計な事を悟られないように話の主導権を握ろうとしていた
「私は自分の研究成果を世界に広めたいだけですよ。 貴方達は知らないだろうが、力を得る為には魔族と喜んで手を結ぶ人間は意外に多いのですよ? 貴方達の周りの人間がそうでないと言い切れますか?」
令子の問い掛けにヌルは意味深な笑みを浮かべたまま淡々と答える
まあ正直に真実を話す訳はなく、逆に西条と令子が不安になりそうな事を話すだけだが……