真の歴史へ・その三

横島達が苦労してる最中、カオス達は早くも城の内部を進みモンスター工場に到着している

城内はマリア姫が知るよりもかなり改造されていたが、モンスター工場はマリア姫が城から逃げ出す前と変わらないため迷うことなく到着していた


「これは……!! ま……まさか……」

「なんです、これは?」

モンスター工場から魔力源を探して移動したカオスだが、その部屋に入ると驚愕した様子で言葉に詰まってしまう

部屋を占領するかのような巨大な物体に、機械音と不気味な唸り声のようなものが響くその部屋はマリア姫ですらも知らなく、異様としか言いようがない


「地獄炉です。 ヌルの奴は地獄からパイプラインを引いて直接魔力源にしていたのだろう」

「そんな……恐ろしいことを……」

マリア姫はこの時改めてヌルの危険さを痛感していた

当然だがヌルは領地も人々も一切見てないのだから



同じ頃、令子と西条は苦戦していた

カオス特製の霊能アイテムや武器はたくさんあるが、ヌルも魔法の杖を使用したり本来の魔族の姿に戻ったりと次々に奥の手を出すので令子と西条は防戦するので精一杯だった


「ふふふ……、隙を伺っても無駄ですよ。 私は他の魔族と違い人間界でも本来の力を出せる術を持ってますから」

消極的な防戦を続ける令子達が何かを企んでる事を察しているヌルは、何を企んでも無駄だと言う

外ではカオスフライヤーが上空を旋回している事から、何かしらの罠なり援軍なりがあると予想しているようである

しかし地獄炉の影響で人間界では有り得ない魔力を得ているヌルは、魔力切れもないし全力をいつまでも続けられるのだ

カオスの頭脳は警戒しているヌルだが、人間の力そのものはやはりナメていた



「美神さんは腕を上げましたね。 やはり彼女の才能もまた天性のモノなのでしょうね」

こちらはカオスの作戦に便乗して城に近付いた鬼天号にいる小竜姫である

ヌルと令子達が戦う部屋の窓付近にクワガタサイズで張り付き、戦いの行方を見守っていた


「そんなに強そうに見えんけどな」

「才能があるってだけで、実力は雪之丞の方が上よ。 貴方は人界で最高の環境で修行してるんだもの」

令子を評価した小竜姫を雪之丞は不思議そうに見るが、雪之丞の場合未来を知らないため小竜姫の言葉の意味がわからない

そんな雪之丞に、タマモは実力で言えば雪之丞が数段上だと語る

才能だけで言えば令子の方が上かもしれないが、令子は才能があるが故に努力などしない

まあ令子の場合は性格的なものも影響しているし、何をやってもある程度出来てしまう天才肌な人間だけに一定以上の強さを得られないのだ


「しかしほとんど実戦だけで、よくあそこまで強くなれますね。 残念ながらアレが彼女の弱点なのですが……」

かつて横島が老師や小竜姫達の修行を受けて大きく成長したように、令子もまた環境さえ整えば成長するはずなのである

まあ強さをあまり求めてない令子では意味のない事だが、小竜姫としてはせっかくの才能を無駄にしていると感じてしまうようだった


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