真の歴史へ・その三

カオスと令子が話し相手をしている頃、監視を小竜姫達に任せた横島とルシオラとヒャクメは三人だけでヌルの城近くまで来ていた


「やはり地獄炉ね。 魔力が微量だけど漏れてるわ」

城近くの森に姿を隠しながら調査している三人は、現代に居ると時と変わらぬ私服姿の上に全身を覆うようなマントを身につけている

このマントは人間が使う霊波迷彩服をルシオラが解析して流用した品物だった

霊力のみならず妖力や神力や魔力など、全て防ぐ優れものである


「結構危険なのねー 並の人間がこの地獄の魔力を受け続けたら体に悪影響が出るわよ」

ヒャクメが得意の霊視で集める情報を、ルシオラが即座に分析していく

横島は万が一の時を考えて護衛として来ただけである


さて何故三人がわざわざヌルの城に来たかと言われれば、ルシオラの情報収集の為だった

ヌルの技術はルシオラが持つ技術より古いが、データとしては役に立つし地獄炉や人造モンスターの実証データが出来れば欲しい

まあルシオラとしては地獄炉や人造モンスターなど作るつもりは全くもないが、応用や流用は可能性が無くはないのだ

アシュタロスに比べて経験が少ないルシオラは、こうやって様々な技術を得て流用する事によって対抗していたのである


「じゃさっさと侵入するか? 早くしないとカオスや美神さん達が動いちまう。 あの人達が動けば予測が難しくなるからな~」

城の外部からの調査を一通り終えた頃、横島達は【隠】の文珠を二人に渡してヌルの城に忍び込み始める

欲しい実証データを得るにはヌルの記録媒体にハッキングする必要があるが、外部との繋がりなど持たないこの時代では城に侵入して直接調べるしかない

タイミング的にはカオスや令子が来る少し前くらいがベストだった

侵入はバレない自信があるが、ハッキングに関しては遅かれ早かれ気付かれる可能性がある

要は横島達の侵入やハッキングを、カオスや令子達の騒動でうやむやにしてしまおうという事だった


「なんかワクワクするのね~」

「緊張されるのも困るが、油断されるのも困るんだがな」

好奇心が疼くのかワクワクした感じのヒャクメに、横島は微妙に苦笑いを浮かべる


「いいじゃないの。 これも経験よ」

横島の言葉に対してルシオラはヒャクメに寛容な姿勢を示す

好奇心が疼く気持ちがよくわかるのだろうし、実戦経験が乏しいヒャクメにとってはいい経験になるだろうからである


「まあいいか。 んじゃ行こうか」

多少のムダ話で和んだ三人は、気持ちを切り替えてヌルの城に侵入していく

対人監視の要員や感知魔法は城の至る所にあるが、どちらも肉体か霊波のどちらかを警戒しているので横島達を見つける事は出来なかった

加えて文珠の【隠】がある為に、警戒厳重な城に簡単に侵入出来てしまう

まあ横島達の実力から考えれば当然とも言えるが、それでもヌルは油断出来る相手ではなかった

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