真の歴史へ・その三

その頃令子と西条の二人はマリア姫に未来から来た事や、カオスがマリア姫そっくりのアンドロイドを作った事などを話して協力を求めていた

先程の機械犬も無事に帰って来ており、それがドクターカオス作のバロンだと説明された為である

バロンの状態やカオスの年齢から推測しても、おそらく全盛期に近いと予想されるし何より令子や西条が未来へ帰る協力者が必要だった


「未来からとは……」

一方令子や西条から話しを聞いたマリア姫だが、判断に困っている

魔道士が言う事には理解出来ない事が多いのは経験済みだが、流石に未来から来たなどと言う人間は初めてだった

マリア姫には二人が邪悪な魔道士には見えないが、簡単に信じるのが難しい話なのは確かである


「せめてドクターカオスが戻ってくるまでここに置いて居ただけませんか? 邪悪な錬金術師に関しては我々も協力します」

地中海に吸血鬼退治に行ったドクターカオスだが、マリア姫から聞いた話によればすでにひと月ほど前に行ったらしい

西条は見知らぬ時代をあてもなく探しに行くリスクを考えれば、ここで待っていた方がいいと判断していたのだ

その協力の対価として邪悪な錬金術師に対する事に協力を申し出る西条だが、令子は不満そうに西条を見つめている


(また西条さんの悪い癖が出たわね)

勝手に協力する事を言い出した西条に令子は苛立ちを感じていた

西条は正義感もあり目の前で困ってる人を放置出来ないのだろうが、令子にとっては過去の面倒事がどうなろうが知った事ではない

適当に近くの村や町で隠れ住み、ドクターカオスを待っている方がいいと考えていた

状況から言ってヌルがかなり厄介なのは簡単にわかるし、マリア姫のヌル打倒に協力する理由が令子にはなかった


「とりあえず、私に似ているという機械人形を取りに行かせよう。 どのみちカオス様が帰って来るまではお前達の真偽もわからぬしな」

結局マリア姫は令子達の判断をドクターカオスに委ねる事に決める

少なくとも令子達がヌルに追われていた事は確かだし、ヌルの味方ではないと判断していたのだ


「大変です! プロフェッサーヌルの部下どもが隣村を襲ってます!!」

令子達がマリアを回収に向かおうとした時、見張りらしき男性が慌てた様子で駆け込んで来る

報告によれば火竜や大勢の兵士の姿が見えたという


「何故、隣村を襲うのだ!」

「貴女かドクターカオスか私達をおびき出すつもりでしょ? 私達を捕まえたい理由はわからないけど、領主の娘である貴女がヌルの存在を教会辺りに訴えれば困るもの」

隣村が襲われた理由もわからずに苛立つマリア姫に、令子は冷静に状況を告げる

令子もヌルの目的や状況はわからないが、マリア姫を放置しておけない事だけは明らかだった


「しかし、今までは村を直接襲うまではしなかったぞ!」

今回は村を襲ったヌルだが、今までは村は直接襲わずに人造モンスターと兵士で脅すだけに留まっていたのだ

下手に村を襲ってマリア姫が領地外へ逃げて、ヌルの存在が他の領主や教会に発覚するのを恐れたのだろう


「その機械犬がカオス作だって事はちょっと考えればわかる事だし、私達と一緒にカオスが帰って来たと勘違いでもしたんじゃないの? 理由は知らないけどカオスを捕まえたいんでしょ?」

淡々と事実を推測する令子の言葉でマリア姫はヌルへの怒りを爆発させる


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