真の歴史へ・その三

森の中の道なき道を二人は必死に走って逃げていく

幸いにしてガーゴイルの巨体は、森の中では追跡スピードは落ちていた

鎧兵士達とゲソバルスキーは少し間が開き追いかけて来るが、結局は逃げるしかない

西条も令子も対人戦闘はもちろん出来るが、二人で20人ほどを相手にして勝てるほどではないし応援でも来ればどうしようもなかった


「どうなってんのよ! まだ何もしかないのに!!」

森の中を走る令子だが、ヒールの高い靴を履いてるので足が痛くて散々である

しかも武器は護身用の神通棍と精霊石しかなく、武装した兵士と戦うなど無理なのだ


「こっちだ! 早く来い!!」

西条と令子が逃げきれないかと思い戦う覚悟を決めようとした時、突然森の中から若い女性が声をかけて来た

年の頃は20代半ばのようだが、どこかで見たような気がする人物である


「なっ!?」

「カオス様の友人なのだろう! 早く!!」

突然森に現れた女性に西条は警戒して銃を向けるが、女性は焦った様子でカオスの名前を出す

その状況は余りにも怪しいとしかいいようがなかったカオスの名前で見知らぬ奴に襲われたかと思えば、今度はカオスの名前で助けられるなど令子にしてみればヤラセかと疑いたくなるほどである

しかし二人に悩んでる時間はない

罠かもしれないが、正面から戦うよりは目の前の女性の話に乗って逃げ出すチャンスを窺うのも悪くないと判断する


「バロン、少し連中を撹乱してくるのじゃ!」

西条と令子が見知らぬ女性に従うように近付くと、女性の命令を受けた犬のようなモノが鎧兵士達の方へ走っていく


「今のは、なんだ? 何かロボット犬のような気がしたが……」

女性に従うままに森の中を走る西条と令子だが、先程の犬のようなモノに驚きを隠せない

明らかに機械的な姿をしていたし、何故この時代にロボット犬が居るのか理解出来ないのだ



「姫さま、ご無事ですか!?」

令子と西条が連れられて来たのは森に囲まれた小さな村だった

村の入り口にはクワやカマなどの農具を持った村人が数名おり、森を警戒するように立っている


「私は大丈夫だ。 すまないが見張りを頼む」

二人を助けた女性は引き続き村人に見張りを頼むと、令子と西条を連れて足早に村の中に入っていく

どうやら先程の鎧兵士達を撒く事が出来たようで、女性の顔には安堵の表情が浮かんでいた


「挨拶が遅れたが、私はマリア。 父はここの領主じゃ」

一軒の民家に入った女性はようやく一息ついたようで名前を名乗るが、その名前に令子と西条は驚いた表情をしてしまう

先程から見知らぬ女性に対して何か違和感を感じると二人は思っていたが、その理由がようやくわかる


そう……、見知らぬ女性は人造人間マリアとそっくりだったのだ

ずっと走っていて気付かなかったが、名前といい顔といい他人の空似にしては似過ぎている


「どうかしたのか?」

名前を名乗っただけで言葉が出ないほど驚かれたマリア姫は、少し訝しげに二人を見つめていた

状況的にカオスの知人だろうと思い二人を助けたマリア姫だが、完全に信じた訳ではない

ヌルの罠かもしれないと警戒しつつ二人を見極めようとしていた

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