真の歴史へ・その三

「いい雰囲気に見えますが、その割に甘い空気にならないですね」

鬼天号に若干落ち着かない様子の小竜姫だが、西条がそのまま令子に迫らないのが少し不思議なようだ

西条のイメージとして、隙あらばいつでも口説くと言ったイメージが強いのだろう


「一緒に居すぎて恋愛感情が無くなったかな? 美神さんは身体以外にとりえがないからなー」

さらっと毒を吐く横島だが、それは未来において散々感じた感想である

悪気が無いのは理解してるが、かなり面倒な性格なのは確かなのだ

いや、悪気がないからこそ余計にタチが悪いのかもしれない

ルシオラと出会って以来真っ直ぐな愛情を受けて来た横島にとって、令子の性格は面倒以外の何物でもない


そんな横島と小竜姫の後ろでは、タマモとヒャクメと雪之丞が普通にDVDを見ていた

魔族特有の毒々しいような鬼天号内部に不釣り合いなDVDプレーヤーと大型ビジュンで見ている

鬼天号完成後、娯楽のない事に気付いたタマモのリクエストにより持ち込んだらしい


「雪之丞も気をつけないとダメよ。 変な女に捕まればロクな事にならないわ」

「確かに騙されそうなのねー」

横島の話を聞いていたタマモとヒャクメは、ふと今の雪之丞なら昔の横島みたいに騙されそうな気がする

人付き合いが下手なのはこの時代の雪之丞も変わらないが、未来であったような人を寄せつけない雰囲気はほとんどない

それに何より精神的には年相応に幼い部分もあった

横島やルシオラ達三人などの頼れる存在が身近にいるため、この時代の雪之丞はいい意味で人間らしかった

そのため未来であったような半ば世捨て人のような性格ではない


「いや、騙されはしないと思うが……」

意味深な笑みを浮かべる二人に対して、雪之丞は少し不満そうである

誰もがそうだが自分が騙さるとは普通は思わない


「貴方は若くして成功してるから、人一倍気をつけないとダメなのよ」

本人はあまり自覚はないが、雪之丞はGSとしてかなり成功してる部類に入る

横島の存在もあり目立ってはないが、業界ではかなり評価が高い

小竜姫の存在もあり今のところちょっかいを出す人は居ないが、将来的にはもう少ししっかりしなくてはダメだろう


「そうかな…… それより、ここ本当に700年前なのか? と言うかなんで中世まで美神令子を監視しに来たんだ?」

相変わらず緊張感のない横島達だが、雪之丞は少し戸惑っていた

急な仕事だと聞いて着いて来てみれば中世に来て令子を監視してるだけなのだから、そろそろ少し説明が欲しかったようだ


「話せば長くなるのよね~ まあ簡単に話せば、ハーピーの時や香港の時と同じよ。 介入するかしないか見極めてる最中なのよ」

説明を求める雪之丞にタマモは少し悩んでる様子である

そろそろ雪之丞には全てを話してもいいのだが、とりあえずこの場所で話す事じゃない

それにお世辞にも幸せと言えない未来なため、知らない方が幸せなのかとも思う

神魔のヒャクメやワルキューレ達でさえ戸惑った未来を、若い雪之丞に話すのはやはり躊躇してしまう


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