真の歴史へ・その三

その後も密かに南部グループの調査を続けている横島達だったが、ある日突然に時空震と共に美神令子が消えていた



「北緯・46度22分17秒、東経・10度41分03秒、スイス・イタリア国境付近! 時刻は22時28分56秒…… 11月2日……西暦1242年……」

気が付けば突然見知らぬ森に来てしまった令子と西条は、同じく見知らぬ森に来てしまったマリアの言葉で唖然としてしまう


「まさか……、時間移動したの?」

母親である美智恵は時間移動能力を持つが、自分には受け継がれていないと考えていた令子は突然の事態にどうすればいいかわからなかった


「落ち着こう、きっと先生が助けに来てくれるさ」

戸惑う令子を励ますように言葉をかける西条だが、彼もまた内心では混乱している


(先生はこの事を知っていたのだろうな)

以前からいろいろ秘密を抱えていた美智恵が、ハーピー襲撃事件以来令子を鍛えようとしていたのはこの為ではと考え始めていた

何か事件でもあるだろうと予想していた西条だが、まさか時間移動するとは流石に思わなかったようである



一方三人が消えたオカルトGメンのオフィスでは、美智恵とカオスの二人が呆然と令子達が消えた場所を見つめていた


(ちっ! 私の知る歴史より少し早いわ。 しかも私が少し席を外した間に来るなんて……)

そろそろ中世に時間移動する時期だと考えていた美智恵は、少し前からカオスの動向を密かに探らせていたのだ

カオスが令子に接触してマリアの充電をすれば、ほぼ必ず時間移動が起きる

それに自分も出来れば同行するつもりだったのだ


しかし美智恵とて忙しく、24時間令子と一緒に居る訳にはいかない

カオスがオカルトGメンのオフィスにマリアの充電に寄った時、美智恵はたまたまオフィスを空けていたのである

カオス来訪の知らせはすぐに美智恵に行き、車を飛ばしてオフィスに帰ったが間に合わなかった


「なっ……なにが起きたのじゃ」

「時間移動です。 私は時間移動能力者で、令子にもその能力が眠っていた」

突然目の前でマリアや令子達が消えた事態を理解出来ないカオスに、美智恵は淡々と事実を語る

時間移動は秘匿したいが、老いたとはいえマリアを整備するドクターカオスを騙すのは不可能だった

下手に勘ぐられるよりは先に話した方が美智恵には都合がいい


「なに!? 時間移動じゃとっ!! あれは因果率を覆す究極の能力じゃぞ!」

「はい。 その危険性はご存知だと思いますが、私は時間移動能力を秘匿して来ました。 令子の能力も出来れば目覚めて欲しくなかった」

驚きを隠せないカオスに、美智恵は険しい表情で淡々と嘘を語っていく


ヨーロッパの魔王と呼ばれしドクターカオス

今はボケが酷いがそれでも並の霊能者よりは頼りになるし、ヨーロッパなどでは影響力も健在だった

出来るだけ敵に回さないで味方にしたい一人である



「うむ…… おぬしも時間移動能力者とはいえ、行き先が解らねば助けにも行けんのう。 マリアさえ居れば追跡も可能だったのじゃが……」

状況的に自分達には何も出来ないとカオスは瞬時に悟っていた

ボケも酷いが、やはりオカルトにおいての知識や経験は並ではない

29/100ページ
スキ