真の歴史へ・その三

間に合わない理由の一つとして、オカルトGメンには基本的に捜査権や逮捕権がないのだ

支部を開設してる国では政府との話し合いでオカルト犯罪の捜査権や逮捕権はあるが、それでも各国の捜査機関の協力が必要不可欠なのである

通常の霊障はあまり問題がないが、オカルト犯罪の場合は捜査は人員確保から始まり逮捕まで繋げるのはかなり時間と手間がかかり大変なのだ

今回の南部グループの件も一部の情報を元に、捜査を開始したばかりであった


「残念ながらオカルトGメンの捜査を待つ事は出来ません。 人造魔族に関しては最早人間の問題ではすみませんので」

オカルトGメンなどの捜査機関の事を考える百合子に、小竜姫は暗に協力出来ないと伝える

これは美神親子の問題もあるが、それ以上に人造魔族に関しては密かに対処しなければならない

兵器としての人造魔族はそれだけ危険であり難しい問題だった


「つまり早急に情報がほしいと……」

難しい表情で呟いて考え込む大樹は、問題の大きさに少々困惑している

大樹がいかに優秀とはいえ、国家を担う指導者でも政治家でもない

世界の危機に繋がるだろう問題に、戸惑いが大きいのは仕方ない事だろう



「やるしかないわね」

横島達が静かに見守る中で、百合子は決意したように強い口調で言い切る


「百合子……」

「どっちにしても忠夫達は手を引けないんだろうし、ならやるしかないじゃない?」

仕方ないとばかにりため息をはく大樹に対し、百合子は半ば開き直りにも見える態度だった

自分達の子供がそんな危険な世界に関わる事に、正直いい気持ちはしてない

未来やら世界やらいろいろ話せない理由があるのは二人も知っているが、それでも何故自分達の息子がという想いも残る

しかし結局のところ親としては、息子の為に協力するしかないと決めたようだった


その後横島達は百合子と大樹と話し合いをして、南部グループの情報収集を二人を中心に進める事が決まる

ルシオラのハッキングやヒャクメの千里眼やタマモの簡易式神など、それぞれの能力も活用しつつ調べて行く事になった

両親自体は大樹の仕事もあり次の日にナルニアに帰っていくが、ナルニアの自宅とルシオラの研究室のある異界を繋ぐ事で緊密な連携や両親のアリバイなどに利用する予定である



そんな両親がナルニアに帰った後、予定外に両親を巻き込む形になった事に横島は微妙な表情を浮かべていた


「しかし、親父とおふくろに頼むとは思い切った事したな~」

「勝手に頼んでゴメンね。 歴史のズレは広がるばかりだし、この件は万が一があってはダメだから……」

少し複雑そうな横島に、ルシオラは申し訳なさそうに謝っていた

幾通りも検討した上での両親への協力依頼だったとはいえ、両親を関わらせたくない横島の気持ちも理解している

正直ベストと言うよりベターな判断だったと思う


「仕方ないさ。 信頼出来て人界に詳しい人間は以前から必要だったしな。 香港の件でも人間側の情報不足が問題だったし」

横島とてルシオラを責めてる訳ではない

黒岩達のようなイレギュラーが増えている現状では、人間側からの情報収集が必要なのは以前から問題になっていたのだ

一度踏み出したからには今更止まる訳にはいかない

現状で人間側からの情報収集においては両親がベターなのは仕方ない事だった

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