真の歴史へ・その三

賑やかな夕食も終わり雪之丞達が自宅に帰った後、ルシオラの研究室では横島達四人にヒャクメと両親を加えて話し合いが持たれていた

異界にあるルシオラの研究室については、両親は入った事はないが存在は知っている

横島の中学時代からルシオラの研究は行われており、話には聞いていたのだ


「海外事業部とリゾート開発部が主なのね」

両親が纏めた報告書を見つめるルシオラだが、表情は険しいままである

予想以上に巧妙に隠蔽をされており、これでは細部まで調べるのがかなり大変だろうと思う


「それで、何をするつもりなんだい?」

遠慮もなく核心を突く百合子に、横島は微妙に苦笑いを浮かべる

黙って引き下がるほど甘い両親でないのは理解してるが、問題の深刻さから考えると引き下がってほしい


「全て話すのは構いませんが、相当の覚悟が必要です。 問題は人界に限らず、神魔上層部も関わってますから。 一つ間違えれば世界の均衡は崩れ破滅に向かいます」

無言の横島に代わり小竜姫が説明を始めるが、その表情は二人が見た事がないほど険しいものだった

百合子と大樹の二人も神族の小竜姫を甘く見てる訳ではないが、見た目の若さと普段の穏やかさからは神族としての厳しい小竜姫は想像するのが難しいのだろう


「覚悟の上だ」

小竜姫の問いに答えたのは大樹だった

基本的に百合子に主導権を握られがちな大樹だが、ここ一番ではやはり決断力も判断力もあるようである


「フフフ…… ここまで関わるとやっぱり知りたいわよね」

珍しく真剣な大樹にルシオラは思わず笑っていた

普段ふざけてる分だけ、真剣な時の集中力やギャップは大きく感じる

それはかつてルシオラが出会った頃の横島と同じであった


「じゃあ、説明するわね」

横島や小竜姫達を見たルシオラは、異論がでなかった事で二人に南部グループに関する情報を説明していく

終始真剣に聞いていた二人だが、そのあまりに危険な内容に顔色が悪くなったのは言うまでもないだろう

社会の第一線で働きナルニアでは時にゲリラも相手にしている大樹だが、心霊兵器や人造魔族に関しては言葉も出ない

まあナルニアでゲリラ相手に戦った経験を持つ大樹だからこそ、その危険性を理解している

発展途上国や貧しい国では、オカルト技術も戦力の一つでしかない

直接ゲリラ兵士として霊能者が戦う事もあるし、呪いなどのように間接的な攻撃も多いのだ

心霊兵器や人造魔族がそんな戦場に登場すればどうなるかなど、簡単に想像がつく

まあ大樹の考えは、横島達が危惧する神魔のバランスや妖怪などの人外生命の安全とは別の見方だが、南部グループの心霊兵器が世界に付近すればオカルト絡みの戦争や争いが増えてもおかしくない

人間の側から見ても見過ごせる内容ではなかった


「オカルトGメンはどうしてるの?」

「オカルトGメンの本部では一部捜査が始まってるわ。 でも間に合わないでしょうね」

あまりに世界的な問題に何故オカルトGメンが動かないか不思議だと言う百合子に、ルシオラは間に合わないと告げる


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