真の歴史へ・その三

(普通の人間だねぇ)

突然事務所にやって来た百合子と大樹に対し、メドーサはあまり興味がなさそうな表情をしつつ結構真剣に見つめていた

横島の正体に何か秘密があると考えてるメドーサにとって、両親は興味がそそられる存在らしい

そして同じ部屋にはメドーサの他におキヌ・雪之丞・愛子・貧・小鳩・老師・美衣・ケイなどが居たが、総じてみんな興味深げに二人を見つめている

何かと常識では計れない横島の両親には、みんな興味があるようだった


「忠夫! 貴様どこまでたくさんの女を囲えば気が済むんだ!!」

一方メドーサと美衣を見た大樹は、思わず羨ましそうに横島に詰め寄る

全てが横島の女とは思わないが、二人のあまりの色気に思わず羨ましくなったらしい


「子供の前で何言ってんだい!!」

興奮気味の大樹だが、百合子はドスの利いた声で瞬時に静かになる

横島家ではよくあるそんな光景なのだが、始めて見たその場のメンバーは唖然として見つめていた

普通と言えば普通だが、普通じゃないと言えば普通じゃない

なんと言うか今の横島からは想像も出来ない両親に、誰もが不思議そうである


「相変わらず元気ですね、お義父さま」

微妙な空気を和らげるように、クスクスと笑みをこぼしながら小竜姫が部屋に入って来る

横島の中学時代に約3年一緒に暮らしただけに、両親の会話はすっかりなれたものだった


「元気過ぎて困ってるわ~ 今だに浮気癖が治らないんだから……」

少し苦笑いを浮かべて答える百合子だが、本当に困ってるようには見えないから不思議である

まあ大樹の浮気は百合子にも原因があるのだから当然とも言えるが……


「積もる話は後にして、今日はみんなで食事にでも行きましょうか」

若干居心地が悪そうな横島とポカーンとしたメドーサ達をチラリと見た小竜姫は、その場の微妙な空気に困ったようで外食でも行こうかと言い出していた


(お二人はちょっと個性が強いですからね。 今の横島さんのイメージから想像した両親とあまりに違ったんでしょうね)

百合子と大樹が悪い人間でないのは小竜姫も理解してるが、他人が二人を理解するのは少し難しいとも思う

本質は横島と大差ないのだが、何分昔の横島と同じでアクが強いのだ


さてそのまま両親と外食に向かった横島達だが、人数の多さから宴会のようになっていた

久しぶりに帰国した二人の為に和食にしたのだが、人数の関係で小さな宴会場のような部屋での食事になっている


「華やかでいいな~ 俺も独立して会社でも立ち上げようかな」

個性様々なメンバーが各々に食事や酒を楽しむ姿に、大樹は思わず自分も会社を立ち上げたいと口にしていた

好みの女性に囲まれた楽しい仕事場を想像すると顔が緩んでしまう大樹だが


「あら、いいわね。 私も協力するわよ」

百合子のにこやかな笑顔の言葉に、瞬時に緩んだ顔が固まってしまう


「イヤダナユリコサン。 ジョウダンデスヨ」

協力の名の元で百合子に支配された職場を想像した大樹は、カタコトの言葉で引き攣った笑顔を浮かべる

好みの女性に囲また楽しい職場から、息を抜く暇もない厳しい職場を想像すると一気に血の気が引いていくようだった


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