真の歴史へ・その三

数分後、シュミレーションを終えた令子は疲れた様子で息を切らしていた

今回美智恵は未来のように百人切りや強さ10倍などを言わなかったが、それでも令子にはキツかったようだ

最も未来の時も、強さ10倍と言う話は嘘ではあったのだが……

理由としては単純に、霊動シュミレーションに限界がある為である


少し話は逸れるが、ここでついでに霊動シュミレーションについて説明しておこう

元々霊動シュミレーション自体は、10年以上前からオカルトGメンや先進各国で密かに開発されていた物である

当初の開発目的は、一般人から霊能者を人工的に作り出す事だった

そもそも霊力は魂の力であり、生まれ持った才能に左右されがちだが一般人にも無いとは言えない

何らかの理由により霊能と無縁な一般人が、霊能力に目覚めた事例が僅かではあるが報告されている

そのような事例や古来からある霊能の修行などを元に、一般人を霊能者にしようという計画がそもそもの根本だった

この一般人の霊能者化計画は、霊動シュミレーションより遥かに古く第二次世界大戦の前からあったと言う

いつの時代も霊能者は数が少なく、神魔の都合により人類は幾度となく危機に陥って来た

そのような教訓から一部の国家では古くから、霊能者を増やす研究が行われていたらしい

霊動シュミレーションは本来その計画の一部として開発されたが、未だに一般人を霊能者にする具体的な方法は研究段階である

そのため霊動シュミレーションは、現在はオカルトGメンや先進各国の対心霊戦闘部隊の訓練用として用いられる事がほとんどであった

日本にも数年前に都庁地下に導入されているが、日本では自衛隊の一部が特殊訓練に使うなどはしていたが基本的にはほとんど使われる事はなかったようである



さて話は戻り令子のシュミレーション結果を分析する美智恵だが、想像以上に未熟さが数値として現れている


(未来のあの時と比べて霊力値が73%止まりとは…… それに攻撃時の集中力はほぼ同じだけど、全体として霊波の乱れが激しすぎる)

令子の未熟さを実感していた美智恵だが、数字は無情なまでに厳しい令子の現状を表していた

未来の時は斉天大聖老師との加速空間による修行もあり、令子の能力は限界近くまで引き出されていたが今はそれがない

(元々地道に修行なんてしない令子が成長したのは、やはり実戦なのね)

美智恵も老師との修行がない分は考えから抜いているが、それでも令子の純粋な力不足が否めない

やはり数々の強敵との実戦が、令子にとっては何よりの修行だったのだ


(まあ、それは始めから分かっていたのよね。 問題は令子を支えるべき人間が居なかった事……)

そもそも隠れてるはずの美智恵が表に出て来た理由は横島の事である

本来ならば隠れて令子を見守るはずだったのだが、令子を守り支えるべき横島が令子と距離を開けてしまった

かつて美智恵はアシュタロス戦で令子を守る為に、未来に行き様々なアシュタロス戦を密かに見てきた

その結果、横島と離れた令子がアシュタロス戦を生き残る未来はほとんどなかったのだ

歴史の僅かな変化で横島が令子の元を去る事はあるのだが、総じて令子にいい結果になる未来は全くと言っていいほどない

それだけ令子にとって横島は必要な存在だったのだ


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