真の歴史へ・その三

それから数日後、美智恵と令子と西条は都庁の地下に来ていた


「噂には聞いていたが凄い施設だな」

美智恵に案内されるがまま歩く西条と令子だが、二人も存在は噂で知っていても来るのは始めてらしく驚きの連続である

存在そのものが極秘とされている東京都心霊災害管理施設

これは日本の首都である東京の霊的災害に対処する中枢施設になるべく作られた施設である

建設にはオカルトと科学の両方を用いた世界最先端の霊的管理施設であり、先進各国やオカルトGメンの技術の推を集めた施設だった


「人間も馬鹿じゃないわ。 いつまでも神魔に振り回されるだけじゃないの。 神が決して人間の味方ばかりじゃないのは、オカルトに関わる者なら常識よ。 人間は知恵を振り絞って対抗してるの」

美智恵の強い決意ともとれる言葉に、二人は事態が予想以上に厳しい事を再認識する

そんな二人が連れて来られたのは霊動実験室だった


「なんなのここは?」

「ここは霊動実験室、一種の仮想空間です。 ここでは記録された者の霊波動を再現してシュミレート出来ます」

驚きを隠せない令子と西条に、美智恵は次々有名な妖怪やら魔族を再現していく

まさかこんな施設があるとは思いもしない二人は、あまりの事に言葉がでない


「まさか……、僕達にここで修行しろと?」

ここまで来れば誰でも想像できる結果だが、西条はそれでも半信半疑だった

オカルトGメンの通常業務に加え修行するのは楽ではない

まして令子の性格を知る西条は、仮に目的があっても続かないのを解りきっている


「ええ、死にたくなければ誰よりも強くなりなさい。 私や横島君や小竜姫様よりも……」

その時の美智恵の表情は悲壮とも見えるほど、険しいものだった

霊的な成長期を過ぎている二人がこれ以上強くなるには、己の殻を破らねばならない

かつて未来において、美智恵が最初に令子をパワーアップさせようとしていたのがこの方法である

最もあの時はルシオラが犠牲になる未来の流れに従っただけで、美智恵自身あのパワーアップを本気ではなかったのだが……

未来が解らなくなり時間移動も不可能な今、美智恵は本気で令子と西条の根本的なパワーアップをさせようと考えている


「ママ……」

美智恵の悲壮とも見える表情からは、令子への深い愛情が見え隠れしている

今この瞬間まで心のどこかで自分は被害者であり関係ないと思っていた令子だが、美智恵の表情からは自分が無関係でないような予感をふと感じていた


「さあ、始めるわよ。 二人とも一から鍛えるからそのつもりで」

戸惑いが消えない二人が納得してないのにも関わらず、美智恵は修行を開始すると告げる


(令子、魂の結晶を持つ貴女ならもっと強くなれるはずよ。 貴女が強くなれば……)

己の最大の切り札である時間移動を失ったのにも関わらず、美智恵は希望を失ってはいなかった

最後の最後まで諦めないその強さこそ、美神美智恵の本当の切り札かもしれない

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