真の歴史へ・その三

「神魔は一定の条件が揃えば復活が可能じゃからのう。 それに変わりゆく歴史の影響が出たかもしれん。 調べた方がいいかもしれんのう」

誰もが半信半疑の中で、無言でキセルをふかしていた老師の言葉は重かった

横島達の歴史改変の影響が過去にまで及んだ可能性も否定出来ないし、最近復活した可能性もある

どちらにしろ最近多くなってきた歴史のズレに関係すると、老師は見ていたのだ



「では次に我々が調べた妖怪の密売組織に関してですが、首謀者および組織の全容は明らかになってませんが、取引先に南部グループが居る事は掴めました。 やはり例の改造妖怪や人造魔族に繋がるのは確かでしょう」

淡々と報告するジークだが、横島達の表情は一応に固い

予想していたとはいえ、南部グループの件はもう少し前に潰すべきだったと後悔もする

ただこの辺りは必要以上に歴史の改変はしたくない事情もあり、バランスが難しい

南部グループの開発の裏にはアシュタロス一派が関わっていた事は、未来で横島が聞いている

仮に横島達が事前に南部グループを潰せば、アシュタロス一派は他の人間と組んで似たような研究をするだろう

その辺りの事情を考えれば、簡単に南部グループに手を出せなかったのも仕方ない事だった


「そういえば、連中の手先と戦闘したようだな。 あの連中は少し前に殺生石を調べてたみたいだぞ。 他にも封印された妖怪やら、土地神の一部を捕らえてたみたいだしな」

ジークに続き報告するワルキューレだが、先日の美衣達の件の時の連中が黒岩達の関わる妖怪の密売組織と繋がる事も確認していた

ルシオラからの連絡で急遽調べたのだが、たまたまワルキューレ達が追っていた人間の一部だったらしい


「殺生石を!?」

「ああ、金毛白面九尾は妖怪の中ではトップクラスだからな。 しかも封印されて弱体化したならば捕らえるのに最適だと判断したのだろう」

殺生石の言葉に表情が変わる横島に、ワルキューレは推測を交えて事情を語っていく

ワルキューレ達が調べた限りでも、連中が捕らえた妖怪の数はかなり多かった

時にはGSのフリをして堂々と捕まえる事もあるし、時には泥棒紛いの事をして封印された妖怪などを捕らえる事もある

基本的に妖怪がどうなろうが気にしない人間が多いため、事態が発覚してないようである

そしてもう一つの問題は、最下級の神族である土地神が連中に捕らえられ失踪している事だった

こちらの場合は妖怪や魔族と戦い敗れると滅ぶ事があるため、失踪の実態を神界が掴めてない事が問題が発覚しなかった原因にあるようだ


「二人は引き続き密売組織の調査を頼むよ。 南部グループの方は俺達が調べる」

報告と情報の検証が一段落したところで今後の方針を話し合うが、ワルキューレとジークは引き続き妖怪の密売組織を調べる事になる

そして今回明らかになった南部グループに関してだが、こちらは横島達が調べる事にしていた

人員がワルキューレとジークでは、二つの調査を同時にするのは難しいし危険なのだ

未来の情報がない密売組織はそれだけ未知の危険もあるため、ワルキューレ達も細心の中心を払っている

この上で南部グループまで調査をするのは無理があった


結局、この日は新たな情報と課題が見つかっただけで終わる


18/100ページ
スキ