真の歴史へ・その三

それからしばらくしたある日の深夜、調査から戻ったワルキューレとジークを交えて横島達と老師とヒャクメは作戦会議を行っていた


「まず黒岩他二名の正体についてだけど、該当する前例はなかったわ」

元始風水盤の時に見た黒岩達の力や能力から種族や正体を調べたルシオラだったが、結論は人間でも妖怪や魔族でもないと言う事である


「つまりは解らなかったという事か……」

「いいえ、該当する種族が居なかったの。 そもそも彼らは肉体と霊体のバランスが異常なのよ」

正体が解らない事に考え込むワルキューレだったが、ルシオラは彼らの体が有り得ない状態だと説明していく

肉体が基本的に人間なのは変わらないが、肉体の強さ自体が人間と比べると数倍高い

加えて決定的なのが霊気構造で、人間でも無ければ妖怪や魔族でもない結果になっていた


「まさか、自然に生まれた者じゃないのか……?」

考えたくなかった結論に達した横島は、恐る恐るルシオラに問い掛ける


「私達も知らない存在が居る可能性も否定出来ないし、結論を出すのは少し早いけど…… その可能性が高いわ」

ルシオラは断定するには早いと言うが、どちらにしろ自然な状態じゃないのだ


「珍しい話じゃないがな…… 人間が己の欲の為に魔族と手を組む事は珍しくない。 ある者は不老不死を求めて、ある者は権力や絶対的な力を求めて人は魔族と契約する」

ルシオラの言葉に考え込む横島達とは対照的に、ワルキューレはある程度予想していた結果のようである

基本的に表沙汰にならない為知られてないが、魔族と手を組む人間は少なくない

代償が魂や命であっても、欲望のために契約する者が後を絶たないのが現実である

人間が魔族化するなど珍しくもないワルキューレにとっては、今回の結果も予想出来ていたようだ


(魔族と手を組むか……)

横島はワルキューレの言葉にふと未来を思い出す

神魔が戦争をする中で、人間は一つに纏まる事すら出来なかったのだ

神族に従う者もいれば、魔族に従う者も居る

神魔がある程度組織で戦う中、人間はそれぞれの宗教や国家の思惑により行動がバラバラだった

加えて神魔内部でも主導権争いなどがあり、人間界はその影響で結果として混沌とした世界になったのだ


「やっぱり気になるのは首謀者ね。 横島の記憶だと、連中は血の気の多い魔族が多かったはず…… いったい誰が」

横島が未来を思いだしている頃、タマモは黒岩達の背後に居る魔族を考えていた

基本的に魔族は人間をナメているし、アシュタロス一派にこれほど回りくどい事をする敵が居たとは思えなかったのだ


「一人居たな。 直接戦う事を考えない魔族が…… しかしあいつは中世で一度滅ぶはず……」

タマモの言葉に横島の頭にはある魔族が浮かんでいる

人間を利用するやり口や直接戦う事を好まない魔族と言えば、一人だけ記憶にあるのだ


「プロフェッサーヌルね」

その魔族はルシオラ達もみんな頭に浮かんでいた

過去で滅ぶ歴史なので可能性としては薄いとずっと考えていたが、妙に人間を使う手口などは似ている気がするのだ

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