真の歴史へ・その三

その後、美智恵の部屋を後にした西条と令子は無言のまま考え込んでいた

今回ハッキリした事は、小竜姫と美智恵の関係が予想以上に悪いということである


「ねえ、西条さん。 小竜姫様とママが関わるような事件が過去にあったかわかる?」

「うむ、僕が知る限りは無いな。 ただ、先生が一時期死んだ事に関係あるとすれば、かなり昔だとは思うが……」

令子と西条は美智恵と小竜姫の過去に注目して考えるが、小竜姫と美智恵が関わるほどの事件が近年あったとは考えにくい

二人が知るのはGS試験の時に小竜姫がメドーサと戦った事くらいなのだ

その結果、美智恵の虚偽の死亡工作に小竜姫が関係あるのではないかと西条は考えている


「過去か……。 あれは時間移動能力が関係あると思ってたけど、まさか神族とも関係あるの?」

西条と違い死んだ工作をした理由は聞いてない令子だが、すでに時間移動能力が関係すると半ば確信していた

少し前にハーピーに襲われたばかりだし、時間移動能力絡みで魔族から狙われてるのが死亡工作に関係する考えるのが自然だった


「僕もその辺りはわからないな。 そもそも時間移動自体、存在すら疑われていたほどの究極の能力だ。 何故魔族が狙うのかもわからないし、それに神族が介入するのかもわからない」

時間移動に関しては伝説的な話として存在するとは言われて来たが、実際に証明した者はいない

超常現象が当たり前のオカルト業界ですら、時間移動能力の存在には否定的な者もいるくらいなのだ

オカルトに詳しい西条や令子ですら、時間移動能力に関する神魔の対応などわかるはずがなかった


「強くなれって言われたけど、具体的にどうすればいいのかしら? まさか毎日修行でもしろと?」

美智恵と小竜姫の関係について考えが煮詰まったところで令子は強くなれと言われた事を思い出すが、こちらも具体的にどうすればいいのかわからない

元々天才肌であまり苦労もせずに実力を身につけた令子なだけに、毎日修行するなど考えられないようだ


「僕や令子ちゃんはもう成長期じゃないからね。 普通に考えて修行してもそれほど伸びるはずはないのだが…… それに僕や令子ちゃんが先生より一番劣ってるのは経験だ。 しかし経験を積むのは今までと同じように仕事をするしかないと思うのだがね」

令子ほど修行が嫌いな訳ではないが、かかる時間と成果を比べると修行がそれほど必要とは西条には思えなかった

それに現状でも霊力値だけで言えば、令子は美智恵を越えてるかもしれない

西条から見て令子や自分が美智恵に劣っているのはやはり経験だが、経験を積むには時間が必要であり強くなるために急ぐのは難しいと考えている


(ただ気になるのは先生の焦りだな。 仮に先生が時間移動で未来に行ったとしたら、これから起きる事件や敵も知ってる可能性が高い。 僕や令子ちゃんでは勝てないほどの敵が現れるのか?)

令子が強くなれという意味を考える中、西条は美智恵が未来を知っている可能性に気付いていた

だとすれば何があるのか西条は考えを巡らせていくが、やはりそれ以上真実に近付く事はなかった


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