真の歴史へ・その三

同じ頃、令子と西条はオカルトGメンの美智恵の部屋に呼ばれていた


「あなた達に言っておく事があります。 小竜姫様がメドーサと和解したようです。 今後彼女と会っても手出しは無用です」

無表情で突然語った美智恵の話に、二人は固まってしまう

先日香港で戦った時は、小竜姫とメドーサは敵として戦っていたのだ

それに神族と魔族が和解をするなど、普通は有り得ない


「しかし先生、メドーサに関しては香港で退治した事で本部に報告したはず。 いいのですか?」

驚き意味がわからない西条だが、まず気になったのは元始風水盤の事件の報告書だった

小竜姫の意向によりメドーサを退治したのが美智恵と令子になっているのは、もちろん西条も知っている

そのメドーサが生きているとなると、虚偽の報告書した事になり問題になるのは明らかだった


「いいも悪いもないわ。 小竜姫様に逆らえばいいの?」

ただ疑問を口にしただけの西条に、美智恵は少しムッとした表情で言い放つ

やはり美智恵が一番面白くないのはメドーサが和解した事ではなく、それに利用された事である

これから先の未来が変わった事も重大だが、メドーサの件で横島達に弱みを作られた事も問題だった

しかもメドーサの件に加え切り札の時間移動を封じられた美智恵は、やり場のない苛立ちを抱え込んでいる


「ねえ、ママ。 小竜姫様と一体何があったの?」

素直に疑問を尋ねた西条にまで苛立つ美智恵に、令子はいい加減ウンザリだと言いたげな表情だった

令子としてはまさか問題の元凶が自分だとは夢にも思わない訳だし、何故美智恵が神族である小竜姫と微妙な関係なのかいい加減訳を話して欲しいのだ


「それはまだ言うべき時期じゃないわ。 どうしても知りたいなら、私より強くなりなさい」

苛立ちの表情が一転して悲痛なほど険しい表情になった美智恵は、令子に強くなれとしか言えなかった


(もう時間がないのよ令子。 私の事を心配してくれるなら強くなって!)

美智恵はあえて令子と西条の二人に弱い部分を見せている

二人が意識的にしろ無意識にしろ、美智恵に頼り甘えている現状をなんとか改善したかったのだ

本来は未来のように突き放したいのだが、横島とおキヌが居ない現状では孤立して危険過ぎる

それに横島達への対策上、美智恵が日本を離れるのは不可能だった


「ママ……」

以前から美智恵が何か秘密を抱えているのは感じていた令子だが、改めて苦労している母親の姿にはさすがに危機感を感じている

面倒事は御免だし金にならない事件など大嫌いだが、母親を助けたい気持ちだけは強い


(先生はいったい何の為に動いてるんだ? まさか本当に神族と対立するほどの問題なのか?)

一方西条も元始風水盤の事件から今回の問題までを考えて、小竜姫との対立に近い関係をなんとなく理解している

そしてその原因を考えていくが、やはり情報が少な過ぎてわかるはずもない


(強くなれと言われても、僕や令子ちゃんはすでに霊能力の成長期は終わっている。 具体的な目標もなく強くなれと言われてもな)

美智恵には劣るが霊能者として自信がある西条は、ただ漠然と強くなれと言われてもどうしていいかわからなかった

基本的に理屈から入る西条なだけに、理由も言わないまま強くなれと言われるのはあまり好きじゃないようだ


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