真の歴史へ・その三

次の日、美智恵は六道家を訪れていた


「久しぶりね~ 美智恵ちゃん」

冥菜は相変わらずの笑顔で美智恵を迎えていたが、その表情がおかしい事に気が付いている

あえて自分から理由は聞かないが、内心面倒事なのは感じていた


「突然申し訳ないのですが、私を霊視して欲しいのです」

昨夜は眠れなかったらしく僅かに疲れが見える美智恵は、何の説明もせずに霊視だけを頼んでいた

美智恵としては相手が小竜姫なので訳を話せないし、冥菜が自分から面倒事に関わりたがらないのも理解している

しかし霊視においては六道家の式神であるグビラが世界でもトップクラスであるし、相手が小竜姫なだけに普通の霊視が得意な霊能者には頼めない事情があったのだ


「ん~……、いいわよ~」

少し悩んだ冥菜だが、美智恵の変化が気になったために霊視を引き受ける

そして冥子からグビラを借りてきた冥菜は、さっそく美智恵を霊視していくが……


「何これ~?」

美智恵を霊視した冥菜は、その意味不明の術に首を傾げてしまう

何らかの術が掛かってるのはわかるが、それ以上が全くわからない


「詳しくは言えませんが、術の正体に関する事を少しでもお願いします」

美智恵としては借りに封印が解けるとしても、今すぐに封印を解くつもりはなかった

現状では小竜姫を敵にまわせないし、小竜姫の背後に居るだろう神界の最後通告だとも思っている


しかし、いつでも術が解けるだけの準備はしたかったのだ

相手が神魔だろうが人間だろうが誰も信じる事が出来ない美智恵としては、切り札復活の方法だけは見つけたかったのである


「術の正体って言われても~ 何の術かもわからないわ~ ただ、神気や魔力が少し感じられるけど……」

冥菜は複雑そうな美智恵の表情を伺いつつ霊視でわかった事を告げていくが、神気の言葉に美智恵の表情は一瞬固まっていた


「ありがとうございました。 この事は内密にお願いします」

これ以上は何もわからないと思った美智恵は、冥菜に深く頭を下げて帰ろうとするが止められてしまう


「美智恵ちゃん~ 何をしてるのかわからないけど、その術をかけた相手とは戦わない方がいいわよ~ 明らかに普通の術じゃないもの~」

「ご忠告ありがとうございます。 でもそれはわかってます」

珍しく真剣な表情の冥菜の言葉に、美智恵は一言礼を言って帰っていく


(美智恵ちゃんの悪い癖よね~)

一方弟子である美智恵を心配して忠告した冥菜だが、美智恵があまり聞いてないのも理解していた

優秀過ぎるがゆえに全て自分でやろうとする美智恵の悪い癖を、冥菜は理解している


(困った子ね~ それにしても、誰がかけた術かしら? 神魔両方の力に他にも混じってたみたいだけど……)

詳しく調べる時間もなかったためはっきりしないが、明らかに複数の力による術だった


(異なる力を同時に操る術なんて聞いた事が無いわ~)

そもそも対立するのが宿命とも言える神魔両方の力を使った術など、聞いた事があるはずもない

冥菜は美智恵が何か目的を持って動いているのは知っているが、その相手や目的は知らないようである


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