真の歴史へ・その三

数日後、美智恵はオカルトGメンの自室で一人険しい表情で考え込んでいた


(未来の情報が役に立たなくなって来てるわ)

横島達や美智恵自身の行動の結果、自分が知る未来からだいぶ変わってしまった現実に美智恵は頭を悩ませている

本来は自由に行動出来ないはずの小竜姫は元より、ヒャクメまでが人界に居座っている現実に美智恵は危機感を感じていた

そして美智恵にトドメを刺したのは、やはりメドーサの処遇である


(この時点でメドーサを抜かしたら、これから先がますます未来と違う状況になってしまうわ)

本来は月での戦いまでは、メドーサがアシュタロス一派の主要な敵だったのだ

そのメドーサが消えてしまうと、これから先だれが動くかわからずに未来と違う事件になる可能性もある


(やはり……、新しい未来を知るしかないわね)

それは美智恵が以前から悩んでいた行動だった

美智恵には最後の切り札となる時間移動能力がある

かつてはその能力で未来を知り、令子が生き残る未来へ導いたのだ

この世界であまりに未来と違う横島達の行動を利用し令子を守るには、現在の未来を知るしかないと美智恵はずっと考えていたのである


(問題は神魔よね…… 私はもう時間移動を禁止されている。 仮に時間移動が成功しても、帰って来たら即抹殺されても不思議じゃない)

行動的な美智恵が今まで動かなかった理由は、もちろん神魔の存在だった

美智恵自身、未来で時間移動と歴史を変える事を禁じられているのだから


(でも、横島君は自分で令子を守れと言ったわ。 あの言葉は小竜姫様も黙認している。 と言う事は……)

初めて横島達の元を訪れた時を思い出す美智恵は、あの時の横島の言葉の意味を考えていく


(私の行動はある程度神魔が黙認しているはず……)

変えてはいけないはずの歴史は、すでに横島達の手により変えられてしまった

結果的に自分の行動は神魔界もある程度黙認しているのだろうと美智恵は思う


「一か八か未来に行くしかないわね」

散々悩んだ結果、美智恵は未来に行こうと決意する

出来れば歴史に影響する時間移動関連の事件の前に、未来を知りたいのだ



決意した美智恵は立ち上がり、密かに未来から持ち帰った文珠をその手に握りしめる

これは未来から美智恵が密かに持ち帰った横島の文珠であった

実は元始風水盤事件の時に、美智恵が対メドーサの最後の切り札として使おうとしたのもこれである


「大丈夫。 アシュタロスの反乱を収めるには、私の存在も必要なはず……」

美智恵は神魔が自分を抹殺するかもしれない恐怖を必死に抑えていた

神魔界が何を考えてるか不明だが自分が今も生かされている以上、未来に近い結果を神魔界が望んでいると確信している

最悪でもアシュタロス戦が終わるまでは抹殺されないで欲しいと願いつつ、美智恵は時間移動を発動させた



バシッ!!!


それは何かに弾かれたような感覚だった


「うっ…… まさか失敗したの?」

体に強い衝撃を受けた美智恵は、自分がどうなったか確認しようと辺りを見回す


「ここは……、何処?」

それは何も無い世界だった

自分が立っているのか座っているのかもわからない

いやそれどころか、周り全てが漆黒の闇の中に自分だけが存在している場所だった


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