真の歴史へ・その三

「私はヒャクメ、一応神族の調査官なのね」

ソファーに座り一息ついたヒャクメの自己紹介に、メドーサの顔は強張る


「まさか心を覗いたんじゃあ……」

ワナワナと怒りで震え出すメドーサに、ヒャクメは若干冷や汗を流してしまう

まさかメドーサがここで攻撃して来るとは思わないが、少し前まで指名手配の魔族だったのだからやはり怖いようだ


「覗いてないのねー ここで覗いたら、私が小竜姫に追い出されるんだから」

少し言い訳がましいが、ヒャクメが心まで覗いてないのは本当である

ヒャクメの能力は心を覗くばかりではなく、ほんの僅かな表情や顔色などから相手の心理を見る事は出来るのだ

従って今回はメドーサの思考までは見てなかった


(こんなヤツが居るなんて……)

すでに自分の思考や記憶を覗かれたのか疑念を抱くメドーサだが、よく考えてみればすでに見られてるなら自分を自由にするメリットなどない


「とりあえず、私達は敵じゃないのね。 それに指名手配のメドーサは、すでに倒された事で神魔界共に落ち着いたわ」

警戒心剥き出しのメドーサに、ヒャクメは恐る恐る現状を教えていく

しかしメドーサは、有り得ない現状と話に自分が騙されてる気がしてならない


「何故、私を自由にする?」

「私は頼まれた事をしただけだから、それは横島さんに聞いて欲しいのね」

今更ながら自分の扱いに納得がいかないメドーサに、ヒャクメは軽い口調で知らないと言い切る


「また、横島か……」

以前小竜姫も口にしたが、また横島の名前が出た事がメドーサは信じられない

やはり基本的に人間を見下しているのは変わらないようだ

まあこれはメドーサに限った事ではなく、神魔全体が同じように人間を見ているという事なのだが……


「貴女は神界を疑ってるんでしょうけど、神界はこんな事はしないわ。 今回の件は横島さんの考えだから、直接聞くといいのね」

ヒャクメの言葉を最後に、メドーサは口を開く事はなかった


(とりあえず現状把握をするのが先だね)

今メドーサにわかるのは、自分が殺されないと言う事だけである

その先に何があるのか、そして横島と神界の関係など現状を把握する事が大事だと考えていた
 
 
同じ頃、ルシオラの研究室では横島と小竜姫を加えて話し合いが続いていた


「参ったな…… まさか妖怪狩りをしてる連中が居るとは」

事態の深刻さに横島の表情は険しかった


「問題は妖怪狩りが未来でもあったのか、私達知らないのよね」

「妖怪と言えば、南部グループが関わってたんだけど…… あの後どうなったのか知らないんだよな」

タマモのつぶやきに横島は未来で知る事を語るが、残念ながらたいした情報が無い

未来において横島は令子と共に南部グループの実験施設から、グーラやガルーダ達と共に捕まっていた妖怪達は全て解放していた

しかし、横島が知る事はそれだけである

南部グループについては、裁判や逮捕のニュースすら聞いてない

あまり事件が大きく報道されなかったのか、それとも揉み消されたのかすら知らないのだ


「時期的に考えて、裁判が行われたとしてもアシュタロス戦後でしょうね。 アシュタロス戦後は、私達妙神山に篭ったから人界の情報は知らないのよね」

ルシオラは事件から裁判が行われてた時期を推測するが、あの後捜査を始めれば少なくともアシュタロス戦後までは裁判はなかっただろうと予想する

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