真の歴史へ・その二

「すいません、私にもわからないんです」

メドーサの問い掛けに美衣は、少し落ち込んだように今朝からの事を説明し始める



この日、美衣とケイはいつもと同じ平和な朝だった

ケイは家の近くで遊び、美衣は近くで採れた山の恵みで朝食を作っていた時のこと

美衣は突如家の周りの森から不穏な気配を感じていた


「ケイ! いらっしゃい!!」

森の気配が人間だと悟った美衣はすぐにケイを家の中へ戻し、付近の様子を伺っていく


「母ちゃんどうしたの?」

美衣の様子がおかしい事に不思議そうなケイだが、美衣は声を出さないようにゼスチャーで伝えるだけである


「ここか…、確かに妖怪の反応があるぞ」

その頃、美衣の家は迷彩服を来た怪しげな連中に囲まれていた


「この辺りには妖怪が住んでるって噂があったからな… 久しぶりに当たりだ!」

怪しい連中はそんな会話をしながら家に近付いていく

銃口は常に家に向いており、まるで狩りでもするように慎重に近寄っている


「じゃあ、やるぞ!  間違っても殺すなよ!!」

リーダーらしき男が指示を出して、家の中を伺いながら催涙弾のような物を撃ち込もうとするその瞬間、美衣はケイを守るように抱えて家から飛び出していた


「クッ! 撃て! 多少の怪我なら構わん!!」

突然現れた美衣に驚いた部下に、リーダーらしき男は激を飛ばして美衣に銃を撃つ

バン!!

彼の銃弾は美衣の腕をかすめたが、美衣は止まる事無く逃げていた



「それで逃げてたって訳かい……」

少し不機嫌そうなメドーサは、美衣の話を聞いて何かを考え込んでいる


「さっきも言ったが、あいつらは妖怪退治に来たんじゃない。 おそらくあんた達を捕まえに来たんだろうさ」

メドーサの話を聞いたケイは、怯えるように美衣にしがみついていた

意味のわからないまま人間に追われていたケイは、ようやく事情を理解し始めているようだ


(あいつらの持ってたレーダーは、まさか……)

メドーサは二人に説明しつつ、面倒な事に巻き込まれた事に気付いていた


「母ちゃん、これからどうするの?」

不安そうなケイに、美衣は答える言葉が見つからない

家に帰ればさっきの連中に見つかるのは確実だし、かと言って行く場所も無いのだ


(まずいね。 アタシ一人なら問題無いけど、こいつらは……)

自分一人なら何処でも生きて行ける自信があるメドーサだが、美衣とケイが問題だった

先程の連中から逃げられるとは思えない


それに妙な事に巻き込まれてしまった結果、横島達との約束がどうなるのかも問題だった


(今更アシュ様の元には帰れないし、帰りたくもない)

せっかく神魔のしがらみから抜け出せるかもしれないのに、わざわざアシュタロスの元に戻るつもりは無いらしい


(アシュ様も何を考えてるかわからないしね。 何故金で動く連中や頭の狂った奴しか集めないのかもわからない。 アタシにはあのお方の未来が見えないんだよねぇ)

メドーサは数人の仲間を思い出していくが、魔族の中でも狂ったような者しか居ない事に不自然さを感じていた

アシュタロスが本気で同士を集めるなら、もっと集まるはずなのだ


メドーサはそこまで考えた時、突然意味深な笑みを浮かべていた

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