真の歴史へ・その二

そして日が暮れる頃、おキヌの知り合いの浮遊霊達が続々集まって来ていた

酒や料理がテーブルに並ぶ中に飲み食いが出来ない浮遊霊のために線香が焚かれている光景は、なんとも言えない奇妙な光景である


「ワシも長生きしとるが幽霊と酒を飲む事は初めてじゃのう」

線香の匂いが部屋に漂う中で幽霊相手に酒を飲むのは、老師でも経験が無いようだ

やはり神様と幽霊で一緒に飲み会をするとは、普通は考えもしないようである


「というか、ここまでしないと解決しないのか?」

おキヌと小鳩や愛子やルシオラ達が石神を迎える準備をするのを暇そうに見ていた雪之丞は、あまりに回りくどいやり方を理解出来ないらしい

未来に比べれば対人面は別人のように変わっている雪之丞だが、基本的に戦闘以外に興味が無いのは同じだった


「石神の横暴を止めるだけなら、方法はいくらでもあるよ。 いくら神族とはいえ、ここは人界だしな。 ただ、浮遊霊と石神を共存させるのは簡単じゃないよ」

横島は雪之丞の疑問に答えるように、石神に対しての対処の方法をいくつか説明していく

一番簡単なのは石神を別な場所に移す事である

どっかの山奥に神社を作って、石神を浮遊霊の居ない場所に移せば問題は起きない

元々人間の都合で移動して来た石神なのだから、礼儀を通して再び場所を変えるのが一番平和的で問題が無いのだ

他にも除霊的手段で石神を封じる方法などもあると一応教えるた横島だが、実は横島自身もこの時代で神族を封じた経験など無い

ただ雪之丞にそんな方法があると教えただけである


「へ~、いろいろあるんだな…」

「基本的に神族とのトラブルは珍しいし、面倒なんだよ。 下手な手段を用いると、周囲の霊的バランスが崩れるからな。 実は俺も経験が無いから、小竜姫に聞いて知ってるだけだけど」

雪之丞に神族と人間のトラブルの話を聞かせていると、いよいよ石神がやって来た


(こいつら……)

石神は事務所に入るなり、老師やヒャクメやルシオラ達を見て表情が変わる

さすがに人間でないのはすぐにわかるようだ


「石神様、今日はありがとうございます」

「なるほどね…。 随分と面白い環境で暮らしてるじゃないか」

「みんないい人ばかりですよ。 私の大切な人達です」

笑顔で石神を迎えたおキヌは、石神の意味ありげな笑みにも素直な笑顔で返す

石神としては多少嫌みも込めていたのだが、おキヌは気が付いてないようだ


「皆さん、今日は仲良く楽しんで下さいね」

招いた石神や浮遊霊達が集まったとこで、おキヌは石神に酒を注いで浮遊霊達には線香を焚いている

浮遊霊達は石神が来た途端怯えて静かになっているが、おキヌはいつもの調子で盛り上げて行った

そんな中でも微妙な空気はなかなか変わらなかったが、横島達や老師やヒャクメや貧が混ざって酒を飲み出すと賑やかになっていく


「あんたら何者だ?」

おキヌに進められるまま酒を飲む石神だったが、神族の老師や小竜姫やヒャクメが気になるようだ


「訳あって名は明かせません。 ただ、あなたの想像通りなのは確かですよ」

さすがに浮遊霊達が居る場所で正体を明かす訳にいかない小竜姫は、名前を伏せたままで神族だと認めていた


「何故、そいつらと一緒に…?」

石神の視線は魔族のルシオラや妖怪のタマモと愛子に向いている

さすがに神族が魔族や妖怪と仲良くしてるのは信じられないようだ

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