真の歴史へ・その二

しかし、現在のおキヌ達では解決するのは難しいだろう


「もう少しおキヌちゃんの様子を見よう」

結局横島は、おキヌ達の判断を待つことにした

横島としては未来を知るがゆえに、おキヌや小鳩に期待する部分もある

弱く情けなかった横島の数少ない理解者だった二人なのだから、この時代でも二人なら何かしらの答えが見つけられるのではと思っていた



「話にならねえな! 神様ってよりヤクザじゃねえか!」

石神の横暴ぶりに怒り心頭の雪之丞

さすがにその場では無言を貫いたが、事務所に戻るなり怒りをぶちまけていた


「神族もピンキリやからな。 そもそも、人間の言う事を素直に聞くほうが珍しいんや」

こちらも予想通りの結果に冷静な貧が、神族と人間の難しさを語るが雪之丞は釈然としないようである


「困りましたね…… どうすればいいんでしょうか?」

一方小鳩は、雪之丞とは違い困った様子で考え込んでいた

いろいろ苦労を重ねてきた彼女だが、神族に対する交渉事などは経験も無くどうしていいかわからないようである


「私、もう一回行って来ます。 御神酒を持って行けば、話は聞いてくれると思うんです」

三人の中で最初に決断したのはおキヌだった

横島や小竜姫を頼れば何とかしてくれるかもしれないが、小竜姫が自分に話し合いに行くように進めたと言うことは、話し合いで解決する方法があるのではと思ったのだ

それに幽霊時代の友達が困っているのを、放っておけない気持ちもある

結局おキヌは、明日もう一回話し合いに行く事を決めていた



そして次の日、今度はおキヌと小鳩の二人で出掛けていく

雪之丞は石神に会いたくないと言い、貧は一緒に行くと話がややこしくなるからと自分から待ってる事にしていた


「また、お前達かい。 しつこいね」

最初は出て来なかった石神だが、おキヌが御神酒を供えた時点で現れて嫌そうに見つめる

本当は無視するつもりだったようだが、おキヌが礼儀を通した事で最低限の相手はする気になったらしい


「お願いします。話を聞いて下さい」

真剣に頭を下げるおキヌと小鳩に、石神は呆れたような視線を送る


「あんた達も物好きだね。 浮遊霊の為に……」

浮遊霊の為に真剣な二人に、石神は呆れつつ少し興味を抱いていた

普通は人間が浮遊霊を怖がる事はあっても、守る事は無い

まして二人は悪霊を払う側の霊能者な訳だし……


「私、最近まで幽霊だったんです」

「はあっ!?」

突然おキヌが語った言葉に、石神は意味がわからずに驚きの声を上げてしまう


「私が生まれたのは300年前です……」

驚く石神に、おキヌはゆっくりと自分の過去を語りだしていく

16才の時に死津喪比女を封じる為に死んだ事から始まり、300年の孤独な日々を経験して現代のGSに出会い助けてもらい生き返ったこと

小竜姫の素性などは言わなかったが、おキヌは自分の人生を石神にそのまま語っていた


「私は多くの人や人でない仲間に助けられました。 そんな私だから、私にしか出来ない事がしたいんです。 馬鹿だからどうしていいかわからないけど、幽霊の友達が困ってるなら力になりたし助けたいんです。 私は幽霊だったから」

おキヌの過去を聞いていた石神は、次第にその表情に変化が見え初めていた


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