真の歴史へ・その二

そんな小竜姫の助言により、おキヌは小鳩と貧と雪之丞を連れて石神の元へと向かっていた


(話し合いはあかんと思うんやけどな…)

おキヌ達の勉強の為にあまり口出しするなと言われている貧だが、気が進まないようである


(目に付く幽霊を片っ端から追い出すなんて、乱暴な神に関わってもロクな事があらへん)

小竜姫の考えは理解する貧だが、石神に関わってもいい事無いと気が付いているようだ



そうして石神の元にたどり着いたおキヌは、害の無い浮遊霊達を追い出すのは止めて欲しいと頼み込んでいた


「ここは私のシマだ。 どうしようが私の勝手だ」

頭を下げるおキヌを睨みつける石神は、まるで話を聞く気配は無い


「それに貧乏神! あんたは何のつもりだ? まさかあたいの仕事に文句を付けるつもりかい?」

石神は霊能者であるおキヌ達を警戒するように、一緒に居る貧にも怒りの矛先を向けていた


「あんさん少しやりすぎでっせ。 人間と浮遊霊は切っても切り離せない存在や。 中には守護霊となり守ってる奴もおる。 そんな連中をまるごと追い出してどないするつもりや?」

「浮遊霊を許すと、それに混じって悪霊や妖怪が寄ってくるようになる。 あたいのシマになった以上それを許す訳にはいかねえな」

石神の考えを確認するように問い掛ける貧に、石神はイラついた表情で怒鳴る

縄張り意識が強い石神なだけに、貧乏神の存在も気に入らないらしい


「そんな乱暴な… 幽霊や妖怪には、いい人もたくさんいるのに……」

「あたいはこのシマを管理するだけだ。 後の事は知らないね」

あまりの横暴ぶりにおキヌと小鳩のみならず、雪之丞も驚きを隠せない

そんな三人を小ばかにするような笑みを浮かべた石神は、自分の役目以外は関係無いと言って御神体の石に戻ってしまう

結局おキヌ達は、諦めて帰るしかなかったのである



そして事務所では、横島達がいつものようにヒャクメの能力でおキヌ達のやりとりを見守っていた


「この後どうするのね~?」

見事に話し合いにもならなかった結果だが、ヒャクメはアッサリした様子である

そもそも神族が頑固なのはよくある事だし、人間の都合や言い分を聞く方が珍しい

ヒャクメにも始めからこうなるのがわかっていたのだ


「おキヌちゃん達が今後をどう考えるかですね… 彼女達があんな神族も居ると言う事を、理解してくれればいいのです」

おキヌ達に神族や魔族にも個性がある事を体験させる事が目的だった小竜姫は、この時点である程度目的は達成している

欲をいえばこの事をおキヌ達がどう解決に導くか見たいのだが、それは難しいと思う


「やっぱり第三者の人間が仲介に乗り出しても聞かないか… 未来じゃおキヌちゃんが実質浮遊霊のボスだったから対決になったけど、第三者の人間と対決しても仕方ないしな」

一方未来の時を思い出していた横島は、石神が基本的には悪い神で無い事は知っている

未来でもおキヌが石神に勝った後は浮遊霊を追い出す事がなかったし、それはおキヌが生き返った後も変わらなかった

考えが固い石神だが、実力を示せば決して和解出来ない神ではないのだ


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