真の歴史へ・その二

次の日、横島事務所では美智恵がオカルトGメンに送った報告書を、さっそくハッキングして見ていた


「流石に上手く書いたわね~ これでメドーサの問題は大丈夫ね」

美智恵が提出した報告書を見ていたルシオラは、クスクス笑っている


「美神美智恵を使うとは考えたのう…」

「私達は表に出れないから、メドーサを退治した事にする身代わりが必要なのよ。 それに加え人界の権力の矢面に立って、メドーサを守ってもらうわ」

感心する老師に答えたのは、このアイデアを考えたタマモである


数日前メドーサに自由を与える為に退治された事にすると決めた横島だったが具体案は無く、後でタマモが考えたのだった

その時まず考えたのが、神魔界に嘘がバレないように神魔以外でメドーサを退治した存在が必要だと言うこと

そしてメドーサが人界で生きて行く上で、人界の権力や組織から魔族であるメドーサを守る存在も必要だと考えていた

そんな最低限の条件の中からタマモが選んだのが美智恵だったのだ


令子がメドーサを退治したと言う知らせは、世界中のオカルト業界や神魔界まで知れ渡ることになる

その後メドーサが生きていたのを美智恵が知っても、今更嘘だとは言えずにメドーサの存在を裏で隠し守る羽目になるだろう

まあ美智恵の場合、逆にメドーサを影で退治しようと考えるかもしれないが、そこは横島達が阻止すれば問題は無い


そうなると結局美智恵は、メドーサ退治の手柄を真実にする為に、メドーサを守ると言う皮肉な立場になってしまうのだ

しかも美智恵の政治力や影での情報操作は超一流であり、下手にバレる心配も無い

タマモは美智恵の立場とやり方を上手く利用して、面倒事を押し付けたようだ


「万が一、美神美智恵が気が付いても結果は同じよ。 最終決戦の前に美神令子を一流にするには、この話に乗るしか無いのよ。 彼女の敵は人類でもあるんだから…」

自信に満ちた表情で説明するタマモの話に、老師とヒャクメはただただ感心しながら聞いていた


「これで美神さん達の名前は売れるだろうな」

「ええ、せいぜい派手にやってほしいわ」

この件で令子の名前が未来と同じように有名になると横島は思うが、タマモはそれをも利用するつもりらしい


「あの美神美智恵さんをハメるなんて、タマモちゃんは凄いのね~」

未来の記録で見た頭のキレる美智恵を上手くハメたタマモに、改めて感心するヒャクメだがタマモは静かに首を横に振る


「私がハメたんじゃないわよ。 あの人が罠だと理解しつつ、自分からハマって来たの。 あの人は自分に自信があるのよ。 実際どんな罠でも、逆手にとって勝つ能力もある人だしね」

妖狐であるタマモは常に冷静だった

相手を決して過小評価したりはしないし、逆に過大評価もしない

いわば超現実主義と言えるかもしれない

そしてそんなタマモだからこそ、美智恵の裏を読めているのだ


「でもね… キレ者の彼女だからこそ、こんな見え透いた罠にかかるのよ。 抜けられない蟻地獄なのにね」

意味深な表情を浮かべるタマモは、今後の事を考えると呆れるしかない

人を信用せず己だけを信じる美智恵だからこそ、この先一生嘘をついていかねばならないのだ

そしてこの秘密がある限り、今後横島達は美智恵に対して主導権を握れるだろう


「美神美智恵は誰よりも優秀よ。 でも一人で全てをやろうとするうちは、私達には勝てないわ」

メドーサの件を利用して、美智恵に新たな弱点まで作ってしまったタマモ

この日、横島は改めてタマモの凄さ感じていた


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