真の歴史へ・その二

数日後…、横島達は黒岩達の分析や追跡に加えて次の事件の調査など影ではいろいろ動いていたが、表向きは普通の日常に戻っていた


そして横島達から遅れること二日後、美智恵はようやく帰国して元始風水盤事件の報告書を纏めている


(報告書って言うよりドラマのシナリオね…)

パソコンのキーボードを打つ手を止めた美智恵は、思わずため息をはく

報告書を書かねばならないが内容が事実と全く違い、小竜姫どころか横島や雪之丞の名前すらない

元々報告書には自分達に都合がいいように書くつもりだった美智恵も、さすがにここまで事実と違う内容を書かねばならないとは思わなかった


(それにわざわざメドーサを香港で倒した事にしろだなんて… いったい何を考えてるの?)

軽く苛立ち表情を浮かべる美智恵は、前日に横島から来た電話の内容を思い出す



『香港の件ですが、俺達の名前は一切出さないで下さいね。 それとメドーサに関しては、香港で美智恵さん達が退治した事にして下さい』

『退治? メドーサは捕らえたんでしょう?』

突然の横島からの電話に驚く美智恵だったが、その内容は更に驚きだった

自分達の存在を一切書くなと言うのは小竜姫に言われていたのでわかるが、メドーサの事は少し不自然である

美智恵としてはメドーサが、神界に連行されたとばかり思っていたのだ


『詮索は無用ですよ。 そっちも対魔族戦の成果が欲しいんでしょ? メドーサは美神さんが退治した。 それでお願いします』

心を見透かすような横島の言葉に、美智恵は疑念を持つも従うしか無かった

単純に横島の考えなら従うつもりも無いが、横島の言葉は小竜姫の言葉と同じだから断りにくい

それに加え令子が魔族を退治した結果だけは、どうしても必要だった


(小竜姫様の考えじゃないでしょうね。 ルシオラさんの考えかしら…)

我に帰った美智恵は再び報告書を作成して行くが、誰が何の為にメドーサを香港で退治した事にしたいのかがわからない

基本的に他人に利用されるのは好きでは無い美智恵だが、メドーサを退治した成果と元始風水盤を阻止した結果を得られるなら仕方ないと考えていた


(ただ…、こちらに条件が有利過ぎるのは気持ち悪いわね)

魔族を退治して風水盤を阻止した結果が欲しいとわかっていながら、それを黙認した横島達を美智恵は不気味に思う

今までの横島達の行動を考えると、簡単に美智恵が欲しい結果だけを与えるとは思えないのだ


(何か裏があるわね…)

思惑を隠す横島達を苦々しく思う美智恵だが、小竜姫と対立してまで断る理由が浮かばない

結局美智恵は利用されてると理解しつつ、従う以外の選択は無かったのである


こうして横島達は自分達の存在を隠したままで、神魔人界でその名を馳せたメドーサを退治した事にして自由にしてしまう

令子がメドーサを退治したと言う表向きの報告は、オカルトGメンのみならず神魔界にも同じ報告がされることになっているのだ

無論最高指導者は真実を知るが、神魔界でも表向きはメドーサが人間に退治された事で落ち着く

かつて未来で横島の存在を隠してアシュタロスを退治した結果を自分達の成果にした美智恵は、今度は似たような方法でメドーサに自由を与えるダシに使われたのだが……

美智恵がそれに気付くのはまだ先である


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